育児を女性だけのものにしていると、男性は関わりにくい

 みんなが関心のある「赤ちゃん」や「子育て」と「社会」の問題を、子育て世代にとどまらず、たくさんの人に届く言葉で考えてみせたところに、境さんの記事や本の価値があると私は思いました。ご自身、大学生のお子さんを持つお父さん。ご自身の経験から、こんな提案をします。

 「やっぱり、育児を女性だけのものにしていると、男性が関わりにくいです。私の妻は専業主婦だったのですが、子どもが幼稚園に入園した1990年代のシーンをよく覚えています。都内のある幼稚園では、入園式に園児と保護者1名分の椅子しかなかったのです。当然のように母親と子どもが座って、父親は壁際にずらっと並んで立ち、ビデオ係を務めていました」

 確かにこれでは、お父さんは「子どもにあまり関わらないで」と言われているようで、寂しくなってしまうでしょう。そこで私が思い出したのは、同じころの日本企業の様子です。当時はまだ、産後に働き続ける女性は少数でした。子育て現場はお父さんを仲間外れにし、仕事現場はお母さんを仲間外れにする――。いわゆる性別役割分業の押し付けが、女性だけでなく男性をも居心地悪くしていたのではないでしょうか。

紀伊國屋書店イベントで司会を務めてくれた、境さんの本の担当編集者さん。第二子を抱っこするイクメンでした
紀伊國屋書店イベントで司会を務めてくれた、境さんの本の担当編集者さん。第二子を抱っこするイクメンでした

 紀伊國屋書店のトークでは現役のお母さん、お父さんから、実感のこもったご質問やコメントを頂きました。例えば「3年間、主婦をしていて、仕事に復帰したいと思ったら『ブランクなんだよね』と言われてしまいました。ワークとライフが分断している感じがしています」「僕も会社員時代に、育児休業を取得したら『キミには期待していたんだけどな』と言われてしまいました」といった声。育児経験が仕事にとってマイナスのように思われている現状が見えてきました。

 それに対して境さんは、「『少子化はみんなで考えないとホント、ヤバいよ!』という状況なのに、分かっていない人がまだ多いんでしょうか。僕だったら、『育休頑張れ!』と言うんですけど」とコメントした後、こんなふうに続けました。