殺される確率が一番高い年齢は何歳か

 ちょっと怖い統計をお見せしましょう。私は社会病理学を専攻しており、いろいろ物騒な統計を集めているのですが、殺される確率が一番高い年齢は何歳かご存じでしょうか? 授業で学生に尋ねると「血気盛んな20代」という答えが返ってきますが、さにあらず。じゃあ体が弱った高齢者かというと、そうでもありません。

 答えをグラフで示します。図3は、2009〜2013年(5年間)の他殺被害者数の年齢グラフです。

 最も多いのは、生後間もない0歳の乳児です。ダントツです。この中には、交通事故や転落などの不慮の事故死は含まれず、他者による人為的な力によって命を落とした人間の数です。よって0歳の死亡者の大半は、いわゆる虐待死であるとみられます。

 加害者の素性はこの統計からは分かりませんが、児童相談所に寄せられる虐待相談の統計で見ると、加害者の多くは母親です(厚労省「福祉行政報告例」)。上図の他殺統計は、夫の家事・育児の協力が得られず、子育てならぬ「孤育て」を強いられている母親の苦悩を表現しているように思うのですが、いかがでしょうか。

 この図を学生に見せてレポートを書かせたところ、「結婚して子どもができたら家事をちゃんとしようと思いました。男が家事なんてと思ってたけど、考えが変わりました」(原文ママ)と書いてきた男子学生がいました。読者の皆さんがどう思われるかは分かりませんが、こういう事実があることを申しておきたいと思います。願わくは国会議事堂の廊下の壁にでも貼って、議員の方々にも見ていただきたい。「男性の家庭進出、待ったナシ」です。

 次回は、少年非行のお話です。神奈川・川崎市で少年が殺された事件をきっかけに非行問題への関心が集まっていますが、家庭環境と非行はどう関連しているか。公的データを使って、この点を明らかにしてみようと思います。