子どもに無理をさせないコンサート選びも重要

 とはいえ、小さな子どもを持つ親なら誰もが心配するのが、「子どもが楽しんでくれるのか」「ずっと静かにしてくれるのか」ということでしょう。そのあたりについても聞いてみました。

――子どもがクラシックを楽しめるのか、飽きてしまうんじゃないかという心配を持っている人も多いと思いますが。

 たしかに(笑)。うちは夫婦で音楽が好きなので、子どももいろいろなコンサートに連れていっていますが、反応はその日のコンディションによって違います。楽しんでいることもあれば、「終わった?」「まだ終わらないの?」「もう飽きた」「帰りたい」と言ってくることもあります。

 でも、そのときに「つまらない」と言ったからといって、すぐに「この子にはクラシックは合わない」とは考えなくてもいいと思います。以前、音楽を体験するワークショップにうちの子どもたちを参加させたことがあるのですが、娘はそのワークショップが「やりたくない」と気に入らず、ずっとつまらなそうに外から眺めていただけだったんです。集合写真のときも仏頂面。でも翌日、散歩に出かけたら、そのワークショップで流れた曲を歌っていました。

 その日の体調や機嫌などもありますから、その時の反応だけを見て、うちの子に合う、合わないと判断するのは早計だと思いますね。

――なるほど。それも記憶として蓄積されるわけですね。ただ、クラシックコンサートに行き慣れていない親としては、子どもが隣の席で「飽きた」「もう帰ろう」と言い始めたらどうしようという不安があると思いますが。

 確かに子どもが「飽きた~」と言いだしたら、母親としてはひやひやですよね。その気持ちはよくわかります。うちの子どもも言うことがありますから(笑)。

 私はそういうとき、「せっかく子どものためを思って連れてきたのに」と考えず、「親の都合に子どもを付き合わせた」と考えるようにしています。親の都合に付き合ってくれたのだから、「帰りたい」というのも仕方がないかと(笑)。そういう意味でも、親が自分でもエンジョイできるプログラムを選ぶことが、私にとっては大切です。

 基本的に、嫌がる子どもを無理やり座らせ続けるのはよくないと思います。親にとっても、子どもにとっても、どちらにもハッピーではありません。

 もし子どもが飽きたら一度、ロビーに出てみる。トイレなどの非常事態は仕方がないですが、できれば演奏中ではなく、曲と曲の間に出ると周りの人の迷惑にもなりません。

 そういう意味では、コンサートの選び方も重要だと思います。子ども向けに企画されたコンサートは、1曲が短い場合が多いので、曲間に出て、落ち着くまでロビーで待っていて、落ち着いたら再び席に戻ることもしやすいです。「前半がショスタコービッチで、後半がマーラー」みたいな、1曲が数十分もあるようなコンサートは、途中出て行くのは難しい。そもそも子どもには情報量が大きすぎる、と言えるかもしれません。

 これは読書も同じですよね。いきなり子どもに太宰治や『水滸伝』を読ませないと思います。難解な純文学や長大な大河小説から始めるのではなく、絵本から読み始めるはず。コンサートも同じ。ぜひ子ども向けで、しかも親も一緒に楽しめるコンサートから始めるのがいいと思います。

 ちなみに、どうしてもマーラーのような大作を子どもに聴かせたい場合は、「事前のプレゼンテーションが重要」だそうです。つまり、子どもがその曲を楽しみにするように、親が曲の解説をするということ。「この曲はこうやって生まれたんだよ」「ここのメロディーがきれいでしょう」「ここでホルンが鳴るんだけど」などなど、子どもに興味を持ってもらうために親が一生懸命プレゼンをするわけですね。

新日本フィルハーモニーは運営にも女性が数多く関わる。左がお話を伺った桐原さん(写真/菊池くらげ)
新日本フィルハーモニーは運営にも女性が数多く関わる。左がお話を伺った桐原さん(写真/菊池くらげ)