大切なわが子が、兵隊や売春婦として連れ去られることがあったとしたら……

渋澤健さん
渋澤健さん

 私には3人の息子がいます。そのかわいいわが子達が「子ども兵」として家族から連れ去れることは現在の日本社会の生活では考えられないことですが、世界には、そんな哀しい現実に直面している社会も存在しています。もし自分の子ども達が女の子で、その大切な子ども達が売春宿に売られていくことがあったとしたら……。

 そんなことを想像しただけでやるせない感情が込み上がってきます。でも、この耐えられないほどの哀しい状況が現実である家族が、この世界には存在しているのです。

 子どもに未来の可能性を与えるのも、その可能性を奪うのも、すべて大人です。

 村田さんは、中学2年生のときに、タイから留学してきた女の子をホストファミリーとして迎えた経験があります。それをきっかけに国際協力の仕事を目指していたのです。友人として親近感を覚えていたその子の母国で、自分と同じ年頃の多くの少女の未来が閉ざされているという無惨な状態。そこから、村田さんは目を背けませんでした。

 衝撃を受けた授業のたった2カ月後、村田さんはタイにいました。NGOが企画した10日間の視察ツアーに、早速参加したのです。百聞は一見に如かず。そこで5歳の女の子と会いました。17歳でその子を産んだお母さんはエイズで亡くなり、母子感染により、その女の子もエイズを発症する可能性があったといいます。

 「何とかしなくては」と、帰国した村田さんは様々な勉強会などに参加し始めます。そして、2001年にUNICEF(国連児童基金)や国際的NGO、日本政府が共催で「第2回 児童の商業的性的搾取に反対する世界会議」が開催され、この分野の有識者が世界から横浜に集まりました。18歳未満の子ども達や、18~25歳の若者達も参加し、その日本人の若者代表の一人として、当時19歳の村田さんは法整備や先進国の援助の必要性について提言しました。