支援が必要な子を見極める

 ダイジェスト版の研修の後、参加者から様々な質問が出されました。

Q.1 複数の支援が必要な場合はどうするのですか?

 複数の支援が必要と判断される子の場合、まずは「安全」や「食事」など、生存するために優先度の高いものから支援していきます。

Q.2 避難所で自分を責め、苦しんでいる子どもがいたら、どうすればいいですか?

 その子どもがどういう精神的状態か、また、その子どもの精神的状態にどう対処すべきかの判断は専門家がするものです。専門家でない私達がすべきことは3つのステップを使って子どもの話を聴き、専門家につなげることです。

Q.3 PFAの考え方を普段の生活でも使うことはできるのでしょうか?

 はい。例えば、交通事故を見て動揺している子がいたら、話を聞き、母親の支援が必要だと判断したら母親に電話で話して迎えに来てもらうなど、PFAの3ステップが役立つでしょう。さらに、傾聴などPFAでも使われる方法は、子どもに限らず、家族とのコミュニケーションにも活かせます。

 赤坂さんには今でも心残りがあると言います。

 「被災地の避難所でのことです。『もうすぐ小学校が始まるけど、津波が怖くて行きたくない』『早くがれきが撤去されないかな。うちのおじいちゃん、まだ出てきていないんだよね~』『一番仲のいいお友だちは、津波で流されちゃった子』といった子ども達の言葉を聞いたとき、当時の私は何と声を掛けてあげたらいいか分からず、答えに詰まってしまってばかりでした。震災後にPFAを学び、あのときは『そうなんだ』『そうだったんだね』と子どもが話したいと思っているときは傾聴することが大事だったと思うようになりました」

 「また、こんなこともありました。私達が避難所に開設した『こどもひろば』には、毎日たくさんの子ども達が来ていました。その中には気になる子どももいましたが、誰に相談してつなげばいいのか分かりませんでした。避難所には1000人以上が過ごし、人の出入りも多く、支援者同士の情報共有が不十分だったのです。後になって、避難所の子ども達の様子を知るために、専門家が『こどもひろば』を訪れていたことを知り、気になっていた子どもを専門家につなぐことができればよかったのに、と思いました」

 「つなぐ」を広げるため、セーブ・ザ・チルドレン・ジャパンは国立精神・神経医療研究センター精神保健研究所、災害時こころの情報支援センターと共に「子どものためのPFA」の国内での普及を進めています。また、「子どものためのPFA」に関する研修も不定期で開催しています。いざというとき役立つように、私達も「見る」「聴く」「つなぐ」の3ステップを心に留めておきたいですね。

セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン、東日本大震災復興支援事業部、プログラム・スペシャリスト、赤坂美幸さん
セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン、東日本大震災復興支援事業部、プログラム・スペシャリスト、赤坂美幸さん

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セーブ・ザ・チルドレン・ジャパン http://www.savechildren.or.jp/

(ライター/阿部祐子、撮影/鈴木愛子)