共働き世帯にとって保育園や学童の運営など、子育て支援を担う自治体は頼りになる存在であってほしいもの。このたび日経DUALでは、読者に代わって、自治体の首長への突撃インタビューを開始しました。最初は東京23区に取材を依頼し、区長に質問をぶつけます。

今回は足立区。警視庁勤務、税理士という専門職を経て都議会議員となり、その後足立区長に当選して現在2期目を務める近藤区長。足立区は「治安・学力・貧困の連鎖・健康寿命」という4つの課題に包括的に取り組んでいます。「足立区長 親から子への“貧困の連鎖”を断ち切る」に引き続き、就任からの8年での取り組みの成果として現れている「良い変化」と、「足立区はこんなに良くなったんだ、と区民が誇れる区にしたい」という決意を語ります。

近藤 弥生 区長

1959年東京・足立区生まれ。大学院卒業後、1983年より警視庁国際捜査課勤務。税理士を経て1997年東京都議会議員当選、2001年、2005年再選され3期を務める。2007年、任期途中で辞職し足立区長選挙に立候補、当選。2011年再選され、現在2期目。

就任後、最初に取り組んだのは治安、学力の「ワースト」からの脱却

近藤弥生・足立区長
近藤弥生・足立区長

DUAL編集部 そもそも区長になったきっかけを教えてください。地域を変えたいという思いがあったのでしょうか?

近藤区長(以下、敬称略) 都議会議員の最大与党、自民党に在籍していましたので、望んでいる政策はある程度までは実現できていたと思いますが、東京都は「現場」を持っていません。区民とじかに関われる「地元」という場所で現状を変えていくことに可能性を感じました。

 私が区長になって最初に取り組んだのは、治安の改善です。足立区は「治安が悪い、悪い」と言われ続けてきて、区民からも「マイナスイメージを何とかしたい」という要望が挙がっていたのです。

 足立区は成人式を、新成人による実行委員会方式にしています。その現場で新成人と話すと、必ずそうした要望が聞こえてきます。高校を卒業して大学に入ると、他の地域の友達ができます。足立区の出身だと言うと「そんな危ない所に住んでいるの?」とびっくりされる。最初は冗談だと思っていても、相手が本当にそう思っているのだと知り、二重にショックを受けると。「これでは恥ずかしい。このままでは地元を誇れなくなってしまう」という声がとても多かったのです。

 そこで区として警視庁と連携し、足立区内の犯罪件数を減らす取り組みを進めてきました。積極的に「犯罪を無くす」「町を美化する」といった呼びかけをすることで、区民の意識も変わってきました。

 8年経った今、成果も出てきました。犯罪件数の都内ワーストは返上しましたし、街中のゴミをゼロにするキャンペーンにしても、SNSで情報発信すると、気軽に参加してくれる区民が現れるようになりました。担当職員は「区民の意識も変わっていますね」と実感しているようです。