チームメンバーの“公と私”を上手にコントロールできるのがデキる上司

 「仕事場に家庭事情を持ち込むなんてと、“公私混同”を嫌がるダメボスもいますが、子育て中の社員や親の介護をする社員が増えていく社会では、公私混同上等です(笑)。家庭事情を職場に持ち込まないで仕事を続けようとすると、どうしても無理が出ます。つまり、チームメンバーの“公と私”を上手にコントロールできる人が、これからの時代に勝てるリーダー、社会を育てるイクボスだと思います」(羽生)

 「ただ“公私混同”にもノウハウがあります(笑)」と羽生。「“子どもが熱を出した”といった個人都合でメンバーやお客様に迷惑をかけてしまう場合は、リーダーの手腕が問われるシーン。理想のイクボスは、事態が起きたらすぐ、本人にリスケなどの手配をさせ、引継ぎや延期などを含め優瀬順位をまず当人に判断させる。その結果をチームメンバー全員に周知させるのが重要です」(羽生)

 家庭の事情でチームメンバーにトラブルが発生したとき、上司が特定の(固定した)メンバーに指示を出し、そのフォローを水面下で任せるというケースは多くの職場で見られます。しかし、この方法では特定のメンバーばかりに負担が偏ってしまったり、本人にも後ろめたさが残ってしまったりといった問題があり、職場にきしみが残るケースがある。

優秀な女性社員には「安心と挑戦」の2つを

 

「制約社員の仕事の引継ぎに関する重要なポイントは、上司の指示プロセスの透明化です」と羽生。

山崎さん(左)は自身の体験、日経DUAL羽生編集長(右)は取材を通して見てきた企業の成功事例を語った
山崎さん(左)は自身の体験、日経DUAL羽生編集長(右)は取材を通して見てきた企業の成功事例を語った

 ただ、このときに上司が注意しなければいけないのが、求める仕事のクオリティーは絶対に下げないこと。「求めるクオリティーを下げてしまうと、その社員の評価も下がることになりかねない。つまり、子育て社員は仕事のクオリティが低いことになってしまう」。子育て中の社員であっても、クオリティーを維持することで、本人の評価も下げないように配慮する。その結果、家庭と仕事とをバランスよくこなすことができるようになるという。

 「時には、少し背伸びをしなければいけないような挑戦的な仕事を与えることで、活躍の場を広げることにもつながります。女性に“安心”だけを与えればいいと考えるのはダメボス。女性には、“安心と挑戦”の両方を与える必要がある」と強調した。

採用者、社員、上司と、様々な立場から「優秀な女性が働きたくなる会社」について議論した。
採用者、社員、上司と、様々な立場から「優秀な女性が働きたくなる会社」について議論した。

(文/秋葉けんた 写真/勝山弘一)