任意参加でありながら、全員参加が暗黙の了解になっていることも多いPTA。『PTA再活用論―悩ましき現実を超えて』の著者である作家の川端裕人さんもPTAに関わった経験のある一人。子どもが小学校に入学した日からPTA会員になり「PTAってなんか変だぞ」と感じたり、「いやいやなかなかいいとこあるじゃん」などと思ったりしつつ本部役員まで経験するなかで、感じ、調べ、議論してきたことをまとめたのが先述の一冊です。そんな川端さんが各地の先進的なPTA活動や組織活動をリポートします。第2回のテーマは「PTAの活動をまともにするのは困難を極めるが、最低限押さえておくべきポイントもある」です。

活動を走らせながら「まともな運営」に変えることの困難さ

作家の川端裕人さん
作家の川端裕人さん

DUAL編集部 前回の「PTAは任意加入の団体。役員決めの参加強制は違法」で、PTAはとにかく「まともな運営」をすべきだとおっしゃいました。PTAはベースとしてまともな運営があり、その上にいい活動が重なっていくのがいいと。

川端さん(以下、川端) そうです。ただし、ゼロから作れるなら楽なんですが、PTA問題の難しさは、今既にその組織が存在してしまっているというところにあります。まともな運営をしようと思っても、既に業務は回っている。その業務には「全員加入」を前提としているものがたくさんあるわけです。例えば自治体に下りてくる案件の多くは、PTAが保護者代表であることを前提としている。保護者の代表窓口として使われている側面があるのです。

 地域行事への参加についても、「保護者イコールPTA」だと思われているのが現実です。「PTAは保護者代表なんだから、PTAの加入割合が減って代表性が無くなったらどうするんだ」みたいな批判があります。

 結局、今まであったPTAを運営しながら変えるとなると、「まともな運営」と「よりよい活動」ってセットになっちゃうんだと思います。僕が、入退会のこととかを、今、よく言いがちなのは、自分がもうPTA会員ではなく、直接色々できないけれど、今、大変な思いをしている人の逃げ道くらいは、最低限確保してほしい! って願っているからです。

苦労して立ち上げた新しい活動も、翌年からはただの「引き継ぎ事業」に

川端 ただ、「業務の効率化」と「やりがいのある活動」というとこれもまた違っていると思います。やりがいのある活動って、効率化があまり必要ではない場合もあるんです。「子ども達のために、こういう活動がしたい!」と誰かが言って、「素晴らしい」「パチパチ(拍手)」となったとする。新しい事業を実施するのは、程度の差はあれ、かなり大変です。でもその大変さよりも、新しいことを自分達で企画してやる楽しみのほうが勝つから、みんなが力を出し合える。言い出した人達の価値観で動いているから、やりがいもある。でもその事業は、翌年からは、形骸化された事業の一つとして引き継がれていくわけです。

―― 大いに納得します。

川端 「これだけの効率化を実現しました」という結果でも「じゃあ、その効率化をするために何回会議をしたの?」って気にしないとしゃれにならないのがPTAです。「一番ラクなのは、何もしないことである」というオチは、PTA役員の多くが納得する点だと思います。次々と降りかかってくる数々のお勤めを粛々とこなすのが、最も楽だと。

―― そうなるともう、思考停止ですよね。でも多くのPTAがそうではないでしょうか。今までの活動を走らせながら改革を進めているPTAは、どんなタイミングで行っているのでしょう?

川端 1年かけて議論して、2年目の総会でドンと変えていたPTAがありました。

―― そのくらい時間を掛けて根回ししないと、大きくは変えられないのでしょうね。