任意参加でありながら、全員参加が暗黙の了解になっていることも多いPTA。『PTA再活用論―悩ましき現実を超えて』著者である文筆家の川端裕人さんもPTAに関わった経験のある一人。子どもが小学校に入学した日からPTA会員になり「PTAってなんか変だぞ」と感じたり、「いやいやなかなかいいとこあるじゃん」などと思いつつ本部役員まで経験する中で、感じ、調べ、議論してきたことをまとめたのが先述の1冊です。そんな川端さんが、各地の先進的なPTA活動や組織活動をリポートします。

第1回は「PTAで委員や役員を務めた後、灰のように燃え尽きて辞めてしまった」という経験を持つ川端さんが、PTA活動のどこに衝撃を受けたのか、自身の体験を語ってもらいました。

(日経DUAL特選シリーズ/2015年3月の記事を再録したものです。)

何の免疫もないまま、小学校“本丸”PTAで、いきなり委員に

『PTA再活用論―悩ましき現実を超えて』著者であり、作家の川端裕人さん
『PTA再活用論―悩ましき現実を超えて』著者であり、作家の川端裕人さん

DUAL編集部 川端さんのPTAとの出合いは、お子さんの小学校入学時とのことですね。

川端さん(以下、川端) はい、PTAとの直接的な出合いは、息子が小学校1年生になったときでした。保育園には保護者会がなかったので。

 うちの夫婦は僕が家でものを書いている仕事、妻が会社員なので、小学校に行くのはまず僕だったんです。

―― 保護者会のない保育園だったのですね?

川端 何年か前に胆力のある保護者が「役員のなり手がないなら、保護者会をやめましょう」と言ったのを機会になくなったらしい。行事ごとに親が関わる方式で、イベント前に「誰かやりませんか」「はーい」と。イベント当日に何か係があるのは楽しいですよね。そもそも「誰が役員になった」とか、「役員にならなくてずるーい」といった世界からはかけ離れていました。それはそれで美しく回るんです。

―― 美しく回る、ってとてもいい表現ですよね(苦笑)。

川端 息子の小学校入学で免疫もなく“本丸”PTAと出合い、入学式のその後に、いきなり“美しくない場”に遭遇したわけです。学校主催の第1回学級懇談会と銘打ちながら、先生は自己紹介と連絡事項を5分だけ話して、間もなくPTAの委員決めが始まったんです。

―― 緊張感が漂う、あの時間ですね。

川端 どうしても決まらない役員の一つに「役員選考委員会」というのがありました。「変だな、なぜ決まらないんだろう」と思いつつ「はい、じゃあ僕やりますよ」と手を挙げたのが、PTAとの付き合いの始まりでした。

 そのあと4年間連続で負担が重めの委員や本部役員を務めたのですが、その後、灰のように燃え尽きて辞めてしまいました。だから僕がPTAについて知っていることは、委員や本部役員をやる中で経験したことが半分と、後はPTA会員ではない保護者としてちょっと距離を置いて見ていたことが半分です。