手厚い海外赴任手当は、共働き夫婦を想定しておらず、赴任地で妻が仕事をすることは認められないというのです。そのため宮川さんは東京で仕事を続け、買ったばかりのマンションに息子さんと2人で残ることにしました。職場に復帰してからは、18時30分には会社を出て保育園へ。自宅作業も許される職場なので、保育園からの急な呼び出しにも何とか一人で対応しています。

駐在妻にはなりたくない、でも周囲の言葉に傷付く

 海外赴任に付いていけば、高級住宅地に暮らし、エステやネイルサロン三昧。そんな「駐在妻」ライフをエンジョイしている人を宮川さんはたくさん見てきました。ですが「私は駐在員の奥様暮らしを毎日したいとは思わない」ときっぱり。ですが、周囲の人からは「駐在員の妻としていい暮らしができるのに、なんで付いていかないの?」と不思議がられるそうです。

「それよりつらいのは『一人で大変だね、お子さんかわいそうだね』と言われること」

 夫が単身赴任していて働きながら子育てをするのは確かに大変です。ですが、「一緒にいられない時間が長いと幸せじゃないと、他人に決め付けられてしまうのが寂しいです」と宮川さんは話します。

単身赴任で夫が成長、それを喜ぶワーママ

 3人目は職場結婚し、夫が九州に単身赴任になるまでは職場で毎日夫と顔を合わせていた山岡さん(仮名)です。

 製造業の開発部門に勤める山岡さん夫婦は今年で結婚12年目。子どもは女の子が2人、小学4年生と保育園の年中さんです。同じ職場ということもあり、お互いにいつ転勤があってもおかしくない状況なのは百も承知のこと。どちらかが転勤になったらどうするのか、たびたび話題にしていました。

「ローマだったら仕事を辞めて付いていくけれど、それ以外は一人で頑張って、と結婚当初から言ってました(笑)」

 夫は2歳年下で、仕事上の立場はほんの少しだけ妻の山岡さんの方が上。今では妻の仕事を認め、家事にも育児にも協力的な良き夫ですが、男のプライドのせいか、この境地に至るまでは複雑な思いもあったようです。「以前は夫がイライラしていた時期もありましたが、今は私の立場を客観的に見てくれるようになりました。一緒に住んでいたころは甘えもあったんだと思うんですが、知らない土地で一人暮らしをしてから、ものすごく成長したように感じます」と山岡さんはうれしそうです。