「夫にはがっかり、いないほうがいい」

 夫が帰宅するのは月1回程度。たまに子どもと遊ぶだけでは、育児の本当の苦労は分かりません。藤村さんがどんなに大変だと言っても、何も分かってくれない夫にイライラ。出産前から単身赴任になってしまったので、パパ度が低く、無責任に感じることもあると言います。育児に関しては何の戦力にもならないのが悩みです。「前はまともな人だと思っていたのに、子どもが生まれてからは、こんなこともできないのかとがっかりすることが多いんです」(藤村さん)。

 子どもがいないときは一緒に料理をしたり仲の良い夫婦だったのに、今は会えばダメ出しの嵐。メールでもけんかしてしまい、夫婦仲は悪くなる一方だそうです。

「1カ月に1度帰ってきて、ちょっと手伝ったくらいで俺はやってるぜという顔をされるのが嫌。子どもが熱を出したからシッター会社に電話しなくちゃとか、そういう心配も無く、日々のうのうと残業しているのかと思うと腹が立ちます」

 ただ、夫への不満はたくさんありますが、帰ってきた夫には子どもと全力で遊んでほしいという思いもあり、料理も家事もいつも藤村さんが一通りやってしまうそうです。

 転職したばかりの今の会社で実績を残し、なおかつ、3歳差か4歳差で第2子を出産したいと考える藤村さん。夫の赴任期間は5年くらいの予定ですが、確実に決まっているわけではなく、「それまで(結婚が)持つかどうか分かりませんけど」とぽろり。「何もしてくれないのなら、いないほうがいい」。そんな気持ちが頭をよぎることもあります。

駐在員の妻は専業主婦でないとダメ

「奥さんには家にいてほしい」タイプの宮川さん夫は、内心は仕事を辞めて付いてきてほしいと思っているけれど、ぐっと我慢。宮川さんの意思を尊重し、口には出さないそうです
「奥さんには家にいてほしい」タイプの宮川さん夫は、内心は仕事を辞めて付いてきてほしいと思っているけれど、ぐっと我慢。宮川さんの意思を尊重し、口には出さないそうです

 インタビュー2人目は、夫に転勤があることを承知で結婚した宮川さん(仮名)。メーカー勤務の8歳年上の夫とは、アメリカ留学中に出会い、結婚しました。

 そのとき夫は駐在員としてアメリカに来ており、今後も海外・国内を問わず転勤があると聞かされ、まだ学生だった宮川さんは「それでもいい」と言って結婚したのですが、卒業して働き出すと気持ちが変わってしまいました。夫の駐在期間が終わり帰国が決まったときにはアメリカの仕事を辞めて日本に帰るのが嫌で、このまま残る方法はないか話し合いましたが、ビザの関係やリーマンショックもあり、日本へ帰国することに。

 帰国後、宮川さんは日本で外資系企業に再就職。そして数年後に長男が誕生。東京にマンションも購入しました。家具を買いそろえ、新しい家での暮らしを楽しみにしていた宮川さん夫婦。ですが、夫の東南アジアへの転勤が決まったのは入居2日目のことでした。

 長男は生後4カ月、宮川さんは育休中だったので、取りあえず数カ月間だけでも付いていこうとしましたが、最初の半年間は家族を連れてきてはいけないという夫の会社のルールがあり、その希望はかないませんでした。一方、夫の赴任地には、宮川さんの会社の支社もあったので異動するチャンスをうかがうか現地で新たに職を探すことも考えましたが、そこにも壁がありました。

「夫の会社には、駐在員の妻は専業主婦でないといけないという規定があるんです」