食物アレルギーは決して少なくない病気であり、重症の場合は命の危険につながることも。避けるべき食べ物や緊急時の対応など、医師の診断を基にした正確な情報を、家庭と園・学校で共有することが重要です。
今回は、園や学校と情報共有をする際に欠かせない「管理指導表」の活用法について、国立病院機構相模原病院臨床研究センター アレルギー性疾患研究部長の海老澤元宏医師に聞きました。

園や学校との情報共有は「生活管理指導表」をベースに行う

 園や学校でのアレルギー対策の指針となるよう、厚生労働省や文部科学省がアレルギー対応のガイドラインと生活管理指導表を作成し、普及に努めています。小・中学校向けが「学校生活管理指導表(アレルギー疾患用)」、保育園向けが「保育所におけるアレルギー疾患生活管理指導表」。アレルギー疾患と診断された子どもで、集団生活で特別な配慮が必要な場合のみ、医師に記入してもらい園や学校に提出します。

 アレルギーは症状が緩和したり悪化したり、新規の発症もあったりするため、1年ごとに見直して提出することが基本です。全国共通なので、転園や転校をしてもそのまま使えます。この書類を基に面談を行い、一人ひとりの症状をふまえたアレルギー対応を話し合います。

「生活管理指導表」の普及率はいまだ30%どまり

 2008年に小・中学校向けに、2011年に保育所向けに管理指導表の運営が開始されましたが、その後の文部科学省の調査で、学校での実際の普及率は30%程度にとどまっていることが分かりました。自治体や園が独自に作成したアレルギー調査表を基に管理されていたり、医師の指示ではなく「親の申請」のみで園や学校がアレルギー対応をしたりしていたケースもありました。
 一人ひとりの子どもの症状を正確に把握して事故を防ぎ、いざというときには適切な対応を取るために、「管理指導表」を活用することが大事です。次のページでは、「管理指導表」の中身を解説していきます。