また、食物によりアナフィラキシーを起こす可能性の高い子どもは、エピペン(R)を携帯していることもあります。

エピペン(R)の使い方

 エピペン(R)とは、医師の治療を受けるまでの間、アナフィラキシー症状の進行を一時的に緩和し、ショックを防ぐための補助治療剤(アドレナリン自己注射薬)です。医師から処方された患者本人が携帯するもので、本人が注射できない緊急時には、保護者や園・学校の関係者が打っても医師法違反にはなりません。

出典:ファイザー株式会社HP
出典:ファイザー株式会社HP

 エピペン(R)は下記の症状が一つでも現れたら直ちに打ちます。

●全身
ぐったり
意識もうろう
尿や便を漏らす
脈が触れにくい、不規則
唇や爪が青白い

●呼吸器
喉や胸が締めつけられると言う
声がかすれる
犬が吠えるような咳
息苦しそう
持続する強い咳き込み
ゼーゼーしている

●消化器
持続する強い腹痛
くり返し吐く

 アナフィラキシー症状が進行する前の初期症状(呼吸困難やぜーぜーとした喘息のような症状、犬が吠えるような咳、声がれなどの呼吸器症状が出現したとき)のうちに注射するのが効果的です。もし、正常な人にエピペン(R)を投与しても、ほてりやドキドキ感の症状が起きますが一時的な現象ですので、迷ったら直ちに打つことを心がけてください。
 エピペン(R)を太ももの前や外側に垂直に押し当てて「カチッ」と音がするまで強く押しつけると、内蔵された針が出て、体内へ薬剤が注射できます。緊急時には洋服の上から打つことも可能です。注射後は医療機関に救急車で搬送されます。

食物アレルギーを持つ子どもも安心して給食が楽しめる環境作りを

 アナフィラキシーを起こす可能性のある重度の患者に、除去給食の対応をせずお弁当を持参するようすすめる自治体や、露骨に入園拒否をする園もなかにはあります。安全に給食を食べられる環境を園や学校が整備し、緊急時の対応を整え、きちんとリスクマネジメントを考えた給食提供のあり方が実現できれば、給食提供はしていくべきだと私は思っています。

 そのためにも、「念のための除去」を続けているお子さんは、入園・入学前にきちんと診断を受けましょう。「食物経口負荷試験」が標準的な診断法ですが、実施施設が多くないため、血液検査の結果だけで除去指導をする医師も少なくありません。もし、今かかっている医療機関の診断に不安があれば、適切な診断と指導が受けられる医療機関を探すのも方法の一つです。「食物アレルギー研究会」のホームページに掲載されている、「食物負荷試験実施施設」を参考にしてください。

 保護者の不安につけ込み、根拠のない保険適用外のアレルギー検査をすすめるクリニックや、サプリメントや代替食を販売するといった怪しげなアレルギービジネスが横行しています。保護者が正しい知識を身につけることが大切です。正しい診断と指導を受ければ、食物アレルギーを持っていてもQOL(生活の質)を向上させ、安心して園や学校生活を送ることができます。

(ライター/中島夕子)