集団生活では「完全除去」か「解除」の二択推奨。段階的な除去は求めない

 乳幼児の食物アレルギーの割合は約5~10%と少なくなく、耐性を獲得して徐々に食べられるようになるため症状の変化もあり、現場は混乱しやすいです。実際、30%の保育園で誤食事故が起きていて、そのうち、受診するケースは10%あります。(※)

 乳幼児は自己管理ができないので、隣の子の給食を誤って食べてしまうなどのリスクもあり、医師と保護者、園との連携がとても大切になってきます。

 ところが、中にはガイドラインにのっとった対応をせず、「パンに練り込まれているならOKだが、ヨーグルトや牛乳はNG」のように、部分解除をしているお子さんにきめ細かに対応している園があります。このような対応は一見親切かもしれませんが、誤食事故のリスクが高まることを知ってください。園では安全を最優先に、「完全除去」か「解除」の二択が望ましいのです。

 「うちの園はアレルギー対応をしています」と言っても、必ずしも正しい知識を持っているとは限りません。保育園とやり取りする際は食物アレルギーガイドラインと照らし合わせて、きちんとした対応を取っているかどうか確認する必要があります。

(※)保育園におけるアレルギー対策対応に関わる調査研究(未来財団委託調査研究事業)で2009年7月~8月に実施した、日本保育園保健協議会の会員が在籍する保育園953園(105853名在籍)における調査より

入園までに「食物経口負荷試験」で正しい診断を

 食物アレルギーの最も確実で標準的な診断法が「食物経口負荷試験」です。血液検査や皮膚テストの値は確実ではなく、陽性でも実際には食べられたり、陰性でも食べられなかったりすることがあります。血液検査の結果だけで判断してしまうと、除去の範囲が広がり過ぎて不必要な除去につながります。大豆やごまのアレルギーを持っている子でも、大豆油やごま油なら食べられる場合が多く、大豆がダメでも味噌やしょうゆなら大丈夫という場合もあります。調味料や油まで除去の範囲が広がると、管理が大変になるため、入園・入学までに食べられるのか、食べられないのかを確認しておくことが望ましいです。また、保育園児で未摂取のものはなるべく自宅で食べさせておき、初めての食べ物を園で食べることは避けましょう。