夫との会話が逆に増えた夫婦もいる

 家族が離れ離れで暮らすとなると、住居費や生活費がダブルでかかり、家族に会いに行く交通費など追加でお金も必要になります。会社から家賃や生活費の補助が出たり、帰省のための交通費が出たりする場合も少なくありませんが、どこまで出るかは会社によって異なります。

 単身赴任デュアラーKさんの夫の会社は、月2回分の帰省のために交通費が支給されます。全く交通費が出ない会社や年1回しか出ない会社に比べればかなり恵まれていると言えますが、Kさんの夫には足りません。なぜなら、

「下の子が年少のころから単身赴任となったためか、夫が戻ってくると緊張して便秘になったことがあった」
(妻Kさん・夫が単身赴任中・子ども2人)

ことから、夫が自腹を切って毎週帰省するようになったためです。

 夫が毎週帰省するのは家計的には厳しいけれど、週末は育児も家事も夫に任せることで、Kさんは息抜きができ、夫は子どもと濃密にコミュニケーションが取れ、一石二鳥だそうです。

 一方、先ほど紹介した住まいを実家近くに移した妻Gさんは、夫が単身赴任になったことで良かった面もあると答えてくれました。なぜなら

「家族3人で過ごす時間を確保するため、夫が以前より積極的に家事を引き受け、自発的に動いてくれるようになった」
(妻Gさん・夫が単身赴任・子ども1人)

 からです。

 また離れて暮らすようになって、同居していたころより会話が増えた夫婦も複数人いました。「テレビ電話や電話で毎晩話すようになった」(妻Lさん・夫が単身赴任中・子ども2人)。「以前は要件しか話さなかったが、単身赴任になってから長電話するようになった。時には3時間話すこともある」(夫Mさん・自身が単身赴任中・子ども1人)。まるで結婚前のカップルのようです。

 さらには「毎日朝晩に電話。週末はSkypeをつなぎっぱなしにする」(妻Nさん・過去に夫が単身赴任・子ども2人)という人もいました。ひと昔前は高い通話料を払って遠距離電話や国際電話をかけていましたが、今は家族間は無料で通話できる携帯電話サービスや、SkypeやFaceTime(アップルのテレビ電話サービス)など、お金をかけずに連絡が取れる手段が増えましたね。

 アンケートのなかには「(テレビ電話などで)顔を見ていつでも気軽に話せるから、別々に暮らすのもアリだと思った」という声すらありました。別々に暮らしているから、家族に接する時間を意識的につくったり、コミュニケーション手段を上手に活用したりすることで、家族の絆を逆に強くしている。そんな「単身赴任デュアラー」の家族風景を垣間見ることができました。

 明日公開の第2回では、夫が単身赴任している妻3人の、さらに深い本音を公開します。

(文/辛智恵)