重い合併症に警戒。400~1000人に1人の割合で起こる難治性難聴が怖い

 おたふく風邪は感染しても症状が出ないまま終わってしまう不顕性感染や、症状が出ても軽く済んでしまうことが多いですが、時に重い合併症を起こすことが知られています。

 安静にしていれば防げるというものではなく、おたふく風邪にかかった子の一定数に起こるものなので、「うちの子はならない」という保証はありません。主な合併症は以下の通りです。

難聴
 おたふく風邪に自然罹患した1000人に1人の割合で起こる合併症で、音を感じる神経が破壊されて、一生治らない難聴になる。多くが片側のみなので、親が気づかないケースもあり、実際の発症割合は400人に1人とも。うち1割は両耳に起こり、完全に聴力を失ってしまう子もいる。ワクチン接種で多くは防ぐことができる。

無菌性髄膜炎
 3~10%の割合で起こる、合併症のなかで最も多い症状。頭痛、発熱、嘔吐が起こり、時にはけいれんも。髄膜炎のなかでは比較的症状は軽めで、多くの場合予後は良好。後遺症も無く治るが、1週間ほど入院する場合も。

精巣炎・卵巣炎
 思春期以前に起こることはまれだが、思春期以降でおたふく風邪に感染すると、精巣や卵巣がひどく腫れたり、2週間以上寝込むほど重症化したりすることが知られている。

 おたふく風邪で怖いのは、これらの合併症です。ワクチンで予防することがとても大切です。

「任意接種=必要ではない」は誤った認識。認可されたワクチンはすべて受ける

 おたふく風邪ワクチンは世界の先進国の多くで2回の定期接種なので、流行は見られません。しかし、日本では任意接種のうえ、1回のみの接種が習慣になっているため、毎年約60万人の子どもがかかり、重い合併症に苦しむ子もいます。

 接種費用は自己負担ですが、任意接種だから打たなくてもいいワクチンということではなく、すべての子どもが接種すべきワクチンです。

 1回接種だと何割かの人が感染してしまいますが、2回接種ならほとんどの人が感染を防げて、髄膜炎や難聴といった合併症を起こす確率を下げることができます

 感染しやすい年齢を考えると、1歳で1回目を接種し、1回目の接種から2~4年後に2回目を接種するのがおすすめです。

 その年齢を過ぎてしまったお子さんはもちろん、大人でもかかったかどうかはっきりしない場合は、2回接種をおすすめします。過去に感染した人がワクチンを接種しても問題はありません。

 田中秀朋
東京医科歯科大学医学部卒業。千葉市立海浜病院小児科、東京都立母子保健院未熟児新生児科、川口市立医療センター新生児集中治療科などを経て2007年に「あかちゃんとこどものクリニック」を開業。日本小児科学会認定小児科専門医。

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