大人と同じカトラリーと皿で同じ料理を食べる

 この店のキッズデーは月1回、第1日曜の昼と夜に開催される。ただし、キッズメニューは無い。子どもはアラカルトで注文するか、大人が注文した皿から取り分けて食べる。また、子ども用にハイチェアの用意は無く、通常の椅子にクッションを重ねて座り、大人と同じ目の高さでテーブルに着く。

 「カトラリーや器も大人と同じものをお出ししています。実際に見て触れて、本物の良さも感じていただきたいからです」とサービスを担当するマダム。こうして一人前に扱われることで、子ども達もどこかうれしそうな表情を見せるという。

家族の記念日や両親のもてなしなどに3世代で訪れるゲストも多いそう
家族の記念日や両親のもてなしなどに3世代で訪れるゲストも多いそう

 ファミリーレストランやカフェなどとは違って、コース料理が一皿ずつ運ばれてくるレストランでは、子どもの目には何もかもが新鮮に映るはずだ。「パンはもう食べていいの?」「使ったフォークやナイフはどこに置けばいいの?」「これはどんな料理?」……。次々に飛んでくる質問も、子どもが積極的な興味を持ったことの表れだ。

 「普段の生活の中で食事作法を教えていたけれど、子どもをレストランに連れていくようになってからは、本人から進んで覚えるようになったと話すご家族もいらっしゃるんですよ」とマダム。

 公共の場での心地よい緊張感がマナーを磨き、サービスマンから大人として扱われることで、美しく振る舞おうとする気持ちが育つ。その芽はやがて大人になり、自分で様々なレストランに足を運ぶようになったときにも役立つだろう。

 もちろん、コースの始まりから終わりまでじっとしていられる子どもはそれほど多くはない。楽しい気持ちからはしゃいだり、席を立って遊び始めたりしたとしても、そこは周囲のテーブルも子連れのキッズデー。あまり肩肘張らずに大人もリラックスして過ごせるのがうれしい。