お国柄がにじみ出る世界の子育て事情を、各地に住むライターのリレーでリポートしていくこの連載。1回目のインド編に続いて、第2回は国による抜群のサポート態勢で男女とも柔軟な働き方を選べるオランダです。1960年代には女性の社会進出において欧州の劣等生だったオランダですが、子育てに専念していた主婦達へ再就職のチャンスを与えるきっかけとなった「ワークシェアリング」を1982年に導入。以来、共働きの子育て世帯は着実に増え、斬新な育児支援制度も次々と打ち出されました。
 少子化、保育園の問題に悩む日本にとっても参考になりそうなオランダの子育て事情を、オランダに20年住み、8歳と10歳の子どもを育てている稲葉霞織さんがお届けします。

仕事と育児の両立にストレスは感じない

 小学校低学年の子ども2人を持つ友人のアネケは、管理職に就くアラフォーのキャリア・ウーマンである。夫のダービッドは、某大企業の顧問弁護士で、国内を忙しく飛び回る身だ。

「今晩、何時ごろ帰ってくる?」
「多分、8時半くらい。遅くなる」
「じゃあ、今日は私が子ども達を迎えに行くから、あなたは外で食べてきてね」
「OK!」

 互いに多忙ななか、こんな会話を交わしながら親としての役割分担を難なくこなしている彼らは、オランダのごく平均的な共働き夫婦だ。仕事と育児の両立にストレスを感じたことはない、と語る二人だが、それは、この国の充実した育児支援制度をフル活用しているからと言えるだろう。

託児施設で遊ぶ年少の子ども達。創造性を高める「お遊戯」の時間
託児施設で遊ぶ年少の子ども達。創造性を高める「お遊戯」の時間