130万部のベストセラー『「捨てる!」技術』著者の辰巳渚さん(高1男子、小4女子のママ)、授乳服の製作など、お産・おっぱいをサポートするモーハウス代表の光畑由佳さん(大学生から中学生までの3児のママ)。2人は働く母親として、多くの共通項を持っています。そんなお二人にご自身のキャリア・出産・育児や、仕事と育児の両立について、本音で語ってもらいました。「ワーママと専業ママ 身近なロールモデルはどっち?」に引き続き、第2回のテーマは「辰巳さんが家事に寄せる思い」「光畑さんに授乳服販売を始めるきっかけになった、“中央線事件”」です。

何かあっても「体や手を動かせば何とかなる」という感覚が、私の核

「家事塾」主宰の辰巳渚さん
「家事塾」主宰の辰巳渚さん

DUAL編集部 お二人とも、子育て経験が今の仕事につながっているんですね。

辰巳さん(以下、辰巳) 私の原体験は、独身時代、心も体も壊して会社を辞めて家に閉じ籠っていたとき、家事をすることで自分を取り戻したことなんです。ごはんを作ったり、洗濯をしたりすることでニュートラルな自分に戻れた。だから、何かあったときでも「体や手を動かせば何とかなる」ということが、子どもを産んだときには既に核としてあった。

 子育てがどんなに大変なときでも、季節の飾りつけをしたり、庭に咲いている花を一輪挿しに挿したりすることが大切だったんです。母からは「なんでこんな大変なときに、そんなことをしているの?」と言われましたけど(苦笑)。でも、そのおかげで、今日が乗り切れるという思いがあった。それが今の「家事塾」(家事に関する定期講座を実施)の活動につながっています。

―― 家事塾ではどんな活動をしているんですか?

辰巳 家事塾を始めたのは2009年。さっき言ったような自分の体験から、「家のコトは生きるコト」だと伝えていきたくて始めました。家事の効率的なやり方やスキルそのものを教えるのではなくて、「日々、当たり前の家事をすることが、自分を取り戻し、生きる力を支えになるんだ」と気づいてもらうことを大切にしています。だから、家事が好きとか、得意とかじゃなくてもいいんです。家事をすることで、家族だけではなく、地域や世代もつながっていくんですよ。

光畑さん(以下、光畑) そういうことを伝えるために、いろんな講座があるんでしょ。

辰巳 家事塾の柱の一つが「家事セラピスト」の養成。私と一緒に半年かけてディスカッションしながら、「自分らしい暮らしの整え方」を学んでいく講座です。家事の基礎教養を学びながら、モノやコトを通して自分自身を理解するスキルを身に付けてもらいます。

 2級セラピストになると、家事や暮らしについてほかの人の相談に乗ったり、「暮らす技術」を希望者に教えてあげられるようにもなります。講座を終了して資格を取ることで、地域で家事の相談を受けたり、講演活動をしたりして働き始める人が出てきているのもうれしい。そうやって家事セラピストという仕事が認知されると、今度は「家事」が社会で通用するキャリアにもなっていくはずだ、と思っています。

光畑 家事が一つのスキルであり、キャリアであるという時代がやってくるというわけね。

辰巳 そう。子育てや家事は「キャリアのブランク」ではなくて、キャリアそのものだよね。仕事、家事、子育ての両立という側面からも、家事セラピストという存在をこれからの「生き方・働き方」として提案していきたいの。

 家事塾では家事セラピストが開催する「お手伝い塾」というのもあります。子どもの「生きる力」を伸ばすには、小さい頃からお手伝いを習慣にすることが最適なんです。実はお手伝いの量と学力が比例する、というデータもあるくらい。それに「お手伝いをする」ということは、自然と次の世代に家事のスキルや文化を伝承していくことにもなっていくはず。