「鼻アレルギー診療ガイドライン2009年版」によると、5~9歳のアレルギー性鼻炎の有病率は、スギ花粉症13.7%、スギ以外の花粉症8.3%、通年性アレルギー性鼻炎22.5%と、ほぼ半数の子どもがアレルギー性鼻炎に悩まされています。
 花粉症は大人だけでなく、子どもにも増えている、もはや国民病。なかには乳幼児期から症状が出る子もいますが、5~9歳の小学校入学前後から発症する子どもが増えるのが特徴です。
 とはいえ、発熱のように登園・登校できなくなるわけではないため、つい軽く考えて、忙しい共働き家庭では受診を先延ばしにしがちではないでしょうか。しかし、目や鼻のつらい症状で睡眠が妨げられてしまうと、子どもの成長にも悪影響を与えてしまいます。
 頭に入れておきたい花粉症の基本知識や対策、最新治療法について、多摩ガーデンクリニック院長の杉原桂医師にお話を伺いました。また記事の後半では、「知ろう小児医療守ろう子ども達の会」代表の阿真京子さんと復職を控えたワーママ達の集まりに参加し、そこで聞いてきた不安の声と、実際に花粉症の子どもを持つ先輩デュアラーのアドバイスを紹介します。

(日経DUAL特選シリーズ/2015年2月収録記事を再掲載します。)

 花粉症はアレルギー反応の一つ。0~1歳で発症する子もいますが、小学校入学前後くらいから発症する子どもが増えるのが特徴のようです。まずは、多摩ガーデンクリニック院長の杉原桂医師による解説をお届けします。

花粉症はこうやって起こる!

 昔に比べて、子どもの花粉症は増えている印象があります。両親が花粉症だったり、すでに他のアレルギー疾患を抱えていたりする子どもは発症する確率が高くなります。

 人体には外から侵入してくる異物に対して、それを排除する「免疫」という仕組みがあります。花粉という異物(アレルゲン)が体内に侵入すると、「IgE抗体」という抗体を作ります。この抗体を作りやすい体質が、いわゆる「アレルギー体質」です。

 この「IgE抗体」が一定量に達し、再び花粉が体内に入ると、花粉を敵と見なして、鼻や目の粘膜にある肥満細胞の表面にある抗体と結合します。その結果、肥満細胞からヒスタミンが分泌されて、花粉症の症状を引き起こします。

 くしゃみで「花粉を吹き飛ばす」、鼻水や涙で「花粉を洗い流す」、鼻づまりで「中に花粉が入れないように防御する」。花粉をできる限り体外に放り出そうとする反応が、花粉症の症状です。

スギ花粉だけじゃない。一年を通していろんな花粉が飛んでいる

 花粉症といえば春のスギ花粉が有名です。スギは植林されているので花粉の飛散量も多く、悩まされる人は多いですが、実は一年を通していろんな花粉が飛んでいます。花粉症は一年中起こり得ます。症状があれば受診するようにしてください。

「鼻アレルギー診療ガイドライン2013年版」より一部転載、環境省「花粉症環境保健マニュアル」を基に作成。関東の場合。地域によって花粉の飛散する時期は異なります
「鼻アレルギー診療ガイドライン2013年版」より一部転載、環境省「花粉症環境保健マニュアル」を基に作成。関東の場合。地域によって花粉の飛散する時期は異なります