御三家入試問題は、例年通りか、やや難化の傾向に

 では、上位校の入試問題はどのような内容だったのでしょうか? 

 首都圏上位校の今年の入試問題を見て、西村先生は「今年もかなり難しく、中には大人でも太刀打ちできない問題もあった」と言います。全体的には、例年通りか例年よりも若干難度が上がったと見られます。

 西村先生が「これは面白い!」と注目したのは、麻布と渋谷教育学園幕張中(以下、渋谷幕張)の理科の問題です。麻布では光のスペクトル、渋谷幕張では電磁波など、小学生にとっては難しい問題が出題されていました。しかし、どちらの学校の問題にも共通点がありました。それは、受験者全員を「知らない」というスタートラインに立たせ、それに関する詳しい説明をし、そこから何に気づくかという点が重要視されていることです。

 「こうした問題に直面したとき、『あ~、これは分からないからダメだ』と諦めてしまう子と、『分からないけれど、とにかく読んでみよう』、そして、読んでいくうちに『ふ~ん、そうなんだ』と気づける子との間に決定的な違いが出てきます」

 「けれども、その力は塾の学習だけで身に付くものではありません。中学受験には大手塾のカリキュラムをおすすめしますが、ただそれを受け身で学習していては考える力は養えません。分からない問題に直面したとき、それを能動的に興味を持って学習できなければ、上位校の難問には答えられないのです」

 「例えば、中学受験の算数の問題といえば『○○算』といった特殊算をイメージする人が多いと思います。しかし、上位校の問題には『○○算』と分類できるようなものはほとんどありません。つまりテクニックを身に付けるだけでは解けないのです。それよりも、その過程で身に付けた考え方が重要となり、本質的な理解を問う問題が出題されています」

どうなる? 2016年度の中学受験

 さて、これまで2015年度の中学受験について書いてきました。では、2016年度の中学受験はどのようになるのでしょうか? 西村先生に聞いてみました。

 「2015年度はサンデーショックの影響を受けるという特別な年でした。例年であれば、前年度の入試倍率などはとても有効な情報ですが、2015年度に限ってはあまり参考にはなりません。サンデーショックで影響を受けた女子上位校を狙う人は、2015年度とその前の年の2014年度の両方を見る必要があります」

 「入試問題に関しては、先に述べた通り、中堅校の難化が予想されます。特に国語に関しては、記述式が増える傾向にあります」

 2015年度の中学受験が終わり、新6年生は最後の1年に入りました。また、新4年生は中学受験のスタートラインに立ちました。こうして中学受験は毎年繰り返されていきますが、その中身は年々少しずつ変わってきています。こうした情報を素早くキャッチすることも、受験に勝つ手段の一つと言えるでしょう。

 次回は近年増えてきた「中学入試に英語を取り入れている学校」について紹介します。

(撮影/稲垣純也)