統計データを使って、子育てや教育にまつわる「DUALな疑問」に答える本連載。今回は「離婚率と自殺率の関係」について取り上げます。実は、夫と妻とでは、離婚と自殺の相関関係は全く異なるようなのです。

 こんにちは。武蔵野大学講師の舞田敏彦です。今回は離婚のお話です。離婚とは婚姻関係の解消のことですが、1990年代以降、この数は増えてきています(最近は減少傾向)。「高齢化に伴う熟年離婚の増加じゃないの?」と思われるかもしれませんが、実は離婚の確率が最も高いのは30代の子育て年代です。

 かつては、離婚とはよくないこと、好ましくないことと考えられていました。昔の社会病理学のテキストを見ると、どの本でも離婚に関する叙述に多くのページが割かれています。しかし現在では、そのようなステレオタイプを支持する人はあまりいないでしょう。婚姻とは、共に寄り添い支え合おうという男女の「契約」ですが、何らかの事情でうまく機能せず、お互いにとって不幸な事態であるならば、それが破棄されるのは理に適ったことです。

 しかるに、家族という基本的な集団を喪失することは、大きな苦悩の源泉となることもあります。フランスの社会学者エミール・デュルケムは、「人は何らかの集団に属することなしに、自分自身を目的としては生きていけない」(『自殺論』)と述べていますが、ここでいう「集団」の中で家族は重要な位置を占めています。こう見ると、近年の自殺の増加は離婚の増加とリンクしているように思えますが、現実はどうなのでしょう。男女による違いにも関心が持たれます。これらのデータの観察を通して、家族が人間の「生」にとって持つ意味合い、さらにはそのジェンダー差について考えてみようと思います。

男性の離婚率と自殺率は、相関関係が高い

 私はまず、男性の離婚率と自殺率の長期推移を明らかにしました。離婚率とは、各年の離婚件数を男性人口で割った値です。分子は、離婚を届け出た夫の数と同義です。ベース人口1万人あたりの件数で表します。自殺率は、人口10万人当たりの自殺者数です。2013年の数字をひくと離婚件数は23万1383件、男性の自殺者は1万8158人。男性人口は6200万人ほどですから、男性の離婚率は37.3、自殺率は29.3と算出されます。図1は、この2つの指標の時系列グラフです。1950〜2013年のカーブが描かれています。

 戦後間もない1950年代のころは別として、それより後の時期では両者はおおむね同調しています。80年代半ばの山、90年代後半の急増、そして最近の減少というように、折れ線の型がよく似ています。事実、2つの値の相関係数も+0.7528とかなり高くなっています。