浜松に「CS(顧客満足)経営」で、有名な会社がある。1960年に創業し、今年創立55年を迎える新聞販売店、株式会社柳原新聞店だ。
同社の特色は、新聞配達をする社員が自身の配達地域や購読客のことを極めてよく知っていて、その間柄が近いこと。
例えば「お客様ではない、地域の方から『迷い犬を預かっているんだけど、飼い主を知らない?』と相談された」「秋は配達中にあちこちで柿をもらうので、食べるのが大変」「夕刊配達時は、お話好きのご高齢者の話をできるだけ聞いているが、配達が遅れてもいけないので『今日はここまで。明日続きね』と伝えて帰るようにしている」などといったことが、日常的にある。
こうした結果、新聞全体の購読者数が減少の一途をたどる、極めて厳しい経営環境にありながら、同社は2014年もまた、個人客からの売上を伸ばした。
売上アップの主要因は、地域の惣菜会社と手を組んだ惣菜・弁当の宅配や、森永乳業の宅配サービスの伸長だ。社員が常に顧客のことを考え、顧客との関係が深いから、同業他社が苦戦する「新規事業」も、同社では軌道に乗るのである。
新村久予(しんむら ひさよ)さんは、その柳原新聞店の取締役。自身の役割を「社長の思いを理解し、組織にきちんと伝えつつ、その思いを実現させていくこと」と明確に位置づけ、これら新規事業の実務推進責任者として、125人の社員を引っ張っている。
そう聞くと、「バリバリの正社員として働いてきた」ようだが、そうではない。入社は33歳のとき、パートタイマーとして、だった。しかも、いわゆる本業の「新聞販売」とは異なる、小さな部門での採用である。
次ページから読める内容
- パートでの再就職は「下の子が幼稚園に入ったから」
- ミニコミ紙編集から、「飛び込み広告営業」へ
- 新規購読営業でマネジャーレベルの目標達成。「正社員にならないか」
- パートで働き続けながらの、仕事人生の転換点
- カルチャーサロンの立ち上げを任される
- 全社を動かす新規事業は「自分を信頼してもらうことから」
- 一度は断った取締役への就任を、泣いて引き受けた理由とは
- 夕食宅配事業の推進で、「会議で社員に机を叩かれる」
- お客様思いの社員を作る「情報メモ活動」と「顧客アンケート」
- 現場出身だからなお分かる「うちの社員の素晴らしさ」
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