りんごが欲しいと言ったのに、みかんを配られて満足する人はいない

Q4. 「保育園を考える親の会」が発表している「入園率」は、認可保育園への入園を申請した子どもの人数を、認可保育園に入園できた子どもの人数で割って算出しています。なぜ「認可保育園に関する数字のみ」に注目しているのでしょうか?

A4. もともと自治体が発表している待機児童数がおかしいことを指摘することを目的としていたからです。そのために、2009年から調査を開始しました。

 私自身は、東京都の認証保育所制度ができた2001年から、自治体が発表する待機児童数から認証保育所等に入れた子どもの数が除かれていることを問題にしてきました。その後、都内では認証保育所が激増して、待機児童数が減少したかのように見えていた時期もありました。コストの安い認証保育所の増設による待機児童対策が行われてきたのです。

 ところが近年、入園事情が急激に悪化するなかで、「保育園を考える親の会」の会員の間で、このことが大きな問題になってきました。入園申請のときに調べた実感からは、「入れなかった子どもの数」が3桁にはなっているだろうと思われるのに、公表された待機児童数が2桁になっている。「そんなわけはない」という会員の疑問があり、この調査が始まりました。

 こういった取り組みは、入園決定率の低い自治体に対して保護者が異議申し立てをする際の後ろ盾ともなったと思います。異議申し立てをしても、わが子がすぐに認可保育園に入れるわけではありませんが、認可保育園増設への真剣な要望を伝えるという意味で、とても重要な活動だったと思います。

 このような活動に対し、「なぜ認可保育園でなければならないのか?」という疑問が発せられることもありました。前回記事(「保育はやっぱり「認可園」が一番か?」)でお話ししましたが、認可保育園はやはり安心マークの保育なのです。ある会員の方が、認可保育園に入りたくて待機している児童数を正確にカウントしないことについて、「りんごが欲しいと言ってきた人にみかんを渡しておいて、りんごは要らなかったことにするというのはいかがなものか」と表現したことがありましたが、まさに私達の不満はそこにあるということです。

 認可保育園を増やす機運は2009年ごろから明らかになってきていますが、2013年には認証保育所の増加が頭打ちになっており、待機児童対策の主軸が認可保育園に移ってきていることが読み取れます(保育園を考える親の会『100都市 保育力充実度チェック』)。