「気になる別嬪さん」と虎蔵との恋は、意外な方向へ……

 1年ほど前から週1のペースで通っている幼児教室に「お、このコは将来大変な別嬪(べっぴん)さんになるのでは?」な女の子がいる。

 虎蔵(仮、わが息子・2歳)より2カ月ほど後に生まれたという彼女は、結構な目力の持ち主で、おそらくは数年後、ただそこにいるだけで周囲の野郎共を緊張させる存在となっているに違いない。なんというか、2歳児にして早くも凛とした気品を漂わせているのである。

 彼女のことは、仮にYちゃんとでもしておこう。ヨメの証言によると、Yちゃん、なぜか虎蔵(仮)のことがお気に入りだったらしい。

 「何かっていうと、虎のそばに寄ってきてるのよねー。あれって絶対、アプローチよ」

 正直、わたしはさっぱり気づかなかった。だが、妙に自信ありげなヨメの物言いに、オンナにはオンナにしかわからない世界があるんだろうなと自分を納得させることにした。

 この親ありて虎の子あり。

 人生経験で勝る父親にわからなかったことが、鼻を垂らした息子に理解できるはずもない。教室ナンバーワン美少女からのお誘いに、虎蔵はまったく反応しなかった。Yちゃんの名誉のために付け加えておくと、虎が無関心だったのは彼女に対してだけではない。男の子のお友達にも、女の子のお友達にも、総じてまるで興味なし。ヤツを惹きつけてやまないのは、ミニカーであり、ハンドルであり、あとは、ママだけなのである。

 しばらくすると、Yちゃんも初恋の相手がクルマおたくのマザコン野郎だということに気づいたらしい。そこからの対応は、大抵のオトナのおねーちゃんが取るものとほぼ同じだった。つまり、年が明けると彼女は虎に見向きもしなくなった。

 代わりに、包容力のある年上のオトコにターゲットを変更した。

 チラ、チラ、ニコッ、キャッ!

 ベタと言えばベタである。思わせぶりな目線。笑顔。恥じらい。

 にもかかわらず、ターゲットはあっさり陥落してしまった。

 「すいませんねえ、なんか、気に入っちゃったみたいで」

 愛娘がラブラブビームを送っているのに気づいたYちゃんのお母さんが、恐縮気味に頭を下げる。

 「いえいえ、気になさらないでください」

 平然さを装いつつもニヤニヤ笑いを隠しきれなかったのは……カネコタツヒト49歳だった。

 2歳児、恐るべし。

 だが何よりも恐ろしいのは、2歳児の無邪気な好意に結構マジで喜んでしまっているわたしである。大丈夫か、俺。

 さて、もうすぐ50歳になる父親も心配だが、年明け以降、その息子さんも迷走を始めている。

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  • 大好きだった保育園も、高田道場も、ぜ~んぶ拒否
  • 「うちの子に限って――」 なんて、いま俺思っちゃいました?

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