流行ではなく「変わらない問題」を見つけ出す

 かつて「不良」的な行動やファッションがカッコイイとされていました。当時の大人は認めていなかったでしょうし、まったく理解できなかったはずです。いまの学生に暴走族の映像を見せると、本当にこんなことをしていたのかと笑いが起こります。現代の若者にとって暴走族とはコントに登場するキャラクターなのです。

 こうした表面的な部分は移ろいやすいものです。共働き世帯に限らず、男性に着目した議論を有意義なものにするためには、うわべの変化に惑わされないようにする必要があります。男性について論じる際に注目しなければならないのは、むしろ「何が変わっていないのか」です

 この連載の目的は、男性学の視点から「共働き世帯の男性が抱える問題」について考えてみることです。男性学を専門にしている身としてはとても悲しいのですが、この学問の知名度はほぼゼロでしょう。そのため、まずは男性学とはどのような学問なのかを紹介しておきます。

 男性学とは「男性が男性だから抱えてしまう問題」を扱う学問です。日本では1980年代後半から議論が始まりました。男性学にはすでに30年近くの歴史があります。女性学からの影響を受けて男性学は成立しました。

 男性学と女性学は、「男女の不平等な関係性の解消」、そして、「性別にとらわれない多様な生き方の実現」を共通の目的にしています。そのうえで男性学の役割は、これまであまり注目されてこなかった「男性問題」の輪郭を明確にし、解決の糸口を見つけ出すことです。