流行りの遺伝子検査は「体質を知る目安」くらいに考えるのが無難

 最近、インターネットで申し込める簡便な遺伝子検査が話題を呼んでいます。綿棒で取った頬の内側の組織、髪の毛、唾液などを郵送すると、そこからDNAを採取して検査してくれる仕組み。どんな病気になりやすいか、どんなダイエットが向いているか、どんな才能が眠っているか、などが分かって、しかも費用は数千円……と聞けば、つい試してみたくなるのが人情でしょう。

 とはいえ、医療機関が行っている本格的な遺伝子検査ですら、すでに触れた通りの現状です。この種の簡便な検査でも、例えばお酒に強いか弱いかといった体質を知って、健康を保つための目安にすることはできます。しかし、将来かかる病気がバッチリ分かるかといえば、それは無理です。

 「私もいくつか試してみましたが、気になったのは判定にしっかりした根拠があるとは思えないことです。例えば、肥満に関わる遺伝子は60種類ほどあると言われますが、ある検査は3つの遺伝子だけを調べて太り方のタイプを判定する仕組みでした。それぞれの遺伝子がどのくらい影響するのかもあいまいなまま、“あなたは××タイプ”と分類してしまうのはどんなものかと(笑)。占いのような感覚で、いいことを言われたらそれを励みにもっと頑張る、よくないことはあまり真に受けない、というスタンスで利用するのが正解だと思います」(四元さん)

 特に才能に関するこの種の検査の判定を信じ込むことの危うさを、四元さんは強調します。商品によっては聴覚に関わる遺伝子だけで音楽的才能を評価するなど、やはり根拠の不十分さが目立つとか。

 「芸術やスポーツのスキルに遺伝子がどのように関与するかについてはまだ分からないことだらけですが、病気以上に後天的な要因が大きく影響するのは間違いありません。才能があると言われたからと努力を怠るのはもちろん、否定的な判定を受けてあっさり諦めるのも大間違いです」