DNAには人の個性から生物の進化史までが刻まれている

 遺伝子の設計図によって作られるタンパク質は、体の組織の構成要素となるだけでなく、体を調整するホルモンや酵素になったりもします。その影響が心の動きを含む生命活動全体に及ぶことからすれば、遺伝子は“人体の設計図”どころか“人生のシナリオ”とすら言い得るかも。実際、その人の体質はもちろん、素質や性格なども遺伝子の影響を受けないわけにはいきません。

 ちなみに言えば、DNAをよくよく調べる(他の生物と比較する)と、地球上の生物がどう進化してきたかも分かります。私達ホモ・サピエンスのDNAに、20万年前に現れたネアンデルタール人由来の部分がわずかながら含まれている(つまり混血していた)という事実も、DNAの解析から分かったことです。

 その人の個性から生物の進化史までが盛り込まれた、とにかく膨大な情報の固まり、それがDNAなのです。

 とすれば、そこに病気の原因が紛れ込んでいるのも、ある意味自然なことでしょう。病気の原因となる変異(設計図の書き換わり)を起こした遺伝子を親からもらうことはもちろん、親の遺伝情報を受け継ぐときにコピーミスが起きて、それが病気を引き起こすこともあります。

 「その人の遺伝子自体は基本的に一生変わりません。しかし、生活の中で紫外線や活性酸素などに傷付けられたときのほか、細胞分裂のときにもしばしば体細胞レベルでの変異を起こします。それもある意味では個性のようなもので、特別の悪影響は無いことも多いのですが、病気の原因になることもあります。基本的な遺伝子検査は、そうした遺伝子の変異に注目します」(四元さん)

 ——後編では、遺伝子検査の実情を見ていきます。

(文/手代木 建)