茅ヶ崎市役所こども育成相談課職員の伊藤徳馬さんは、むずかしい子を育てるコモンセンス・ペアレンティング(CSP)という手法を伝授する「怒鳴らない子育て練習講座」を開設した立役者です。2013年夏には『どならない子育て』を出版しています。このたび、伊藤さんにインタビューし、CSPについて詳しく教えてもらいました。

これまで2回にわたり、児童虐待の現状を述べてきました。今回はいよいよ、児童虐待の予防策において有効なプログラム「コモンセンス・ペアレンティング(CSP)」について伺います。

CSPは、褒めてしつける子育てを練習するための実践的プログラム

伊藤徳馬さん
伊藤徳馬さん

 2007年に茅ヶ崎市役所のこども育成相談課に異動した私は、親御さんに「叩くのはまずいです」と言っていましたが、「じゃあ、叩かずにしつけるにはどうしたらいいんですか?」と聞かれたときに答えられませんでした。自分自身、保育士資格も無く、心理学を勉強したわけでもなく、素人でしたから。「これは税金をもらっているプロの仕事としてまずい」と感じていました。

 虐待の予防策が欲しいというのは、職場の一致した見解でもありました。そんなとき、一緒に仕事をしていた家庭児童相談室の相談員さんにCSPの資格を取得していた方がいて「これはいいよ」と薦めてくれたんです。

 CSPとは、神戸の児童養護施設の職員だった方が作った、子どもへの伝え方、ほめ方、叱り方などをロールプレイで練習して身に付ける子育て講座です。

 この内容は、子育ての基本と言われる「褒めましょう」「目を合わせましょう」「諭すように話しましょう」など、当然やれば成果が出る、いわば子育てでは“当たり前のこと”を体系的に分かりやすくまとめたものです。講座ではDVDを見たり、ロールプレイをしたりして、行動療法的に練習して、日々の実践に活かせるような実力を身に付けていきます。

 しかし、CSPの勉強を始めた当初は、私自身もさほどこの手法の力を信じていませんでした。「そんないい話なら、もっと普及していなければおかしい」と斜に構えてさえいました。それが「いける!」という考えに変わったのは、当時2歳半だった長女を叱るときに使ってみて成果を実感したからです。