食事がカップ麺だっていい 掃除されていれば、散らかっていたっていい

 保育園や学校からも「Aさんという児童は、家では朝ごはんは食パンだけのようだ。夜もカップ麺や買ってきたお惣菜ばかりだと聞いた」といった相談をもらうこともあります。でも、我々からすれば、「ちゃんと夕食を用意してもらえているじゃないですか」といったところです。

 先生が家庭訪問に行ったらとても家が散らかっていたそうで「ゴミ屋敷で心配だ」と連絡をもらうこともあります。でも、見に行った我々は「床が見えているし、掃除した形跡もある」という印象を受けたりします。

 確かに、膝の高さ以上にゴミが溜まっていれば“ゴミ屋敷”だと言えるかもしれません。実際にそういうお宅に行ったこともあります。ゴミが溜まって、床がかさ上げされていいて、立つと天井に頭がぶつかってしまう。ここまでいったら教育上問題があると言っても間違いではないと思いますが、こういう事例はごく少数です。

共働き家庭が陥りがちな“学校関係ネグレクト”は、果たして虐待か?

 児童虐待には、暴力の他に“ネグレクト”というものもあります。働いている保護者の方から、「忙しくて、宿題は見てあげられないし、学校のプリントも見られていない。PTAの役員も引き受けないし、面談にもなかなか行けない。いわば、子どもの学校関係をすべて“ネグレクト”してしまっています。これも虐待にあたるのでしょうか?」という質問を受けたことがあります。

 これは、我々が言うところの児童虐待とは違います。ましてや、自分でその状態を問題だと捉えている。我々からすれば、むしろ立派な親御さんです。

 “学校関係ネグレクト”は、それだけでは、いわゆるネグレクトのうちに入りませんから、ご安心ください。ただし、学校関係に関わらないのは忙しくて仕方のない面もあるでしょうし、親御さんの考え方ですから構いませんが、お子さん自身とのコミュニケーションを怠ると、心理的虐待のレベルになってしまう可能性は否めません。目の前のお子さん自身とのコミュニケーションを欠かさないように。そこが肝心なのです。

 参考までに、厚生労働省のホームページに掲載されている「児童虐待の定義」を以下に示しておきますので、念のため、参考になさってください。

* 次回は、伊藤さんがCSPを家庭内で初めて実践したときのエピソードを紹介します。

(ライター/大友康子、撮影/稲垣純也)