むずかしい子を育てるコモンセンス・ペアレンティング(CSP)という手法を伝授する「怒鳴らない子育て練習講座」を開設した立役者、茅ヶ崎市役所こども育成相談課職員の伊藤徳馬さん。伊藤さんは、2013年夏に『どならない子育て』を出版しました。

前回記事「『イライラして叩いただけ』が虐待につながる可能性」では、児童虐待に対しては、目の前の虐待案件の対応だけでなく、予防策としての子育て支援が重要であることをお伝えしました。その方法の一つが茅ヶ崎市を皮切りに始まっている「コモンセンス・ペアレンティング(CSP)講座」。今回は伊藤さんに、児童虐待の現状について伺います。

虐待を疑われて通報されるのは、実はありがちなこと

伊藤徳馬さん
伊藤徳馬さん

 近年、児童虐待に対する社会的認知が上がり、市町村や児童相談所などへの通報は年々増加しています。保育園や幼稚園もかつては本当にひどいケースを通報するだけだったのですが、大きなケガがなくても、「アザがあった」とか、「お風呂に何日も入れてもらっていない」という程度でも市役所に連絡するようになりました。保育園の先生だけではなく、他の人達も敏感になっていて、よく通報してくれるようになりました。

 厚生労働省によると下図の通り、平成25年度に全国の児童相談所で対応した児童虐待相談対応件数は7万3765件になっています。

 茅ヶ崎市では、通報される虐待件数の子どもは、未就学児が約50%、小学生が約30%。残りが主に中学生です。中学生になると、子どもが虐待を受けるというケースもあれば、逆転して子どもが親に暴力を振るう家庭内暴力のケースもあります。高校生になると周囲も虐待とは見なしにくくなるので、通報の数はグッと減ります。

 未就学児や小学生に対しては周囲も敏感です。保護者の叱り方が多少きつかったために、子どもが大声を上げて泣いたというだけで、近所の方が通報をしてくれるケースも結構あります。我々としても、「それはただの夜泣きじゃないかな」「つい声を荒げてしまっただけなのではないかな」と思うこともあります。でも、そんな通報も私はいいことだと捉えています。虐待を見逃さない社会になってきたことは、非常に歓迎すべきことだからです。