家庭内ボキャブラリーを育てるには?

 子どものキャリア教育や思春期のコミュニケーションについての講演実績が豊富な、特定非営利活動法人スクール・アドバイス・ネットワーク理事長の生重幸恵さんも「子どもの話をよく聞き、言葉を引き出し、“家庭内ボキャブラリー”を育てることが、親子の長期に渡る信頼関係にとって最重要」と語気を強める。

 「思春期はある日突然始まるものではなく、子どもがいきなり無口になることはありません。日々の習慣を通じて、親子の関係性はつくられていきます。親から子への言葉が一方的であっていいのは、命にかかわるような危険を防止する時くらい。それ以外はとにかく徹して、聞く! しゃべらせる! 

 そして、子どもが自分の考えを言った時には親も自分の考えをレスポンスして、会話を発展させる。親子の会話を通じて家庭内で言葉を育てることができれば、学校でもきちんと自分の言葉で話す力も育っていきます

子どもの「聞いて! 聞いて!」に「ふ~ん」で返すのはNG

 例えば、子どもが「今日、クラスのA君がB君の算数ノートを隠して、B君が怒って仕返しにA君の椅子を隠したんだ。それで、どっちが悪いのかってクラスで話し合いになったんだよ」と話をしたときに、親があまり関心を示さずに「ふーん。どっちもどっちよね」で終わらせてしまうと、子どもが自ら考えて意見を伝える力は育たない。

 「そんなことがあったんだね。あなたはどう思ったの?」「なるほどね、そんなふうに考えたんだ。でも、正しいと思ったことすべてを行動に移すのって、なかなか難しいよね。お父さんはどう思う?」「そうだなぁ。そもそもどうしてA君はノートを隠そうと思ったんだろう?」…と一緒に思考を発展させていく

 こういった会話は、色々な角度から考えを深めながら、自分の気持ちを表現する訓練になる。この訓練を豊富に積み重ねることができた親子は、思春期になってからも肝心なときには会話が成立する親子になれる。

 子どもが気持ちを伝える訓練は、いつから始めたらよいのか。