日経DUALではスウェーデンで特別取材を行いました。世界経済フォーラムが毎年発表している「ジェンダー・ギャップ指数」の2014年版によると、スウェーデンは第4位(日本は104位)。女性という枠組みだけではなく、育児中の社員が活躍しやすい国というイメージのあるスウェーデンで、新しい概念を発信する経営コンサルタントがいます。その概念は「ParentSmart Company」。ティーナ・ブルーノさんを取材しました。「スウェーデンも50年前は男女平等社会ではなかった」に続く第2弾です。

スウェーデンでさえも育児中社員の働きにくさはある


スウェーデンの経営コンサルタント、ティーナ・ブルーノさん

DUAL編集部 ブルーノさんが提唱している、「ParentSmart Company」という概念について教えてください。

ブルーノさん(以下、敬称略) はい。その前に、スウェーデンの企業の間で、既に広まっている概念である「Parent Friendly Company」という考え方について説明させてください。

 これは育児中の社員の働きやすさを追求するための企業側の姿勢を表す言葉です。例えば「会議は9時から15時の間に設定する」「在宅勤務や柔軟な勤務時間を可能にする」「育児休暇中の給与を保障する」といったルールや制度を社内に設けることを指します。スウェーデン国内の企業は育児中社員への支援が手厚いところが多く、このような制度は充実しています。しかし、実態を見てみると、実は社員の働きやすさが必ずしも実現されていないこともあるのです。

 例えば、確かに社内会議は15時で終わるのですが、子育て中の社員が子どもを保育園に迎えに行くために、他の社員より早めに仕事を切り上げるのはやはり心苦しいものがあります。「お先に」と声を掛けても誰もが笑顔で送り出してくれるわけではありません(笑)。

 では、なぜ制度はあっても働きにくさが残るのか――。その理由を私はこう考えます。残念なことですが、スウェーデン国内の企業でも、やはりある意味、育児中社員は「(育児という)制約を負っている」「労働力として不十分な人材」だと見なされている面があると思うのです。

育児中の社員は、育児中だからこその強みを持つ人材

 一方で、リーダーシップ育成とコミュニケーションを専門にした経営コンサルタントとして、私はこれまで数々の企業現場に入り、様々な人材を見てきました。その中で、育児中の社員が持っている「育児中だからこその強み」に気づくことが増えてきました。

 例えば人材育成を語るときに欠かせないスキルの一つに、「アクティブ・リスニング力」があります。これは、コミュニケーション技法の一つで、相手の言葉を傾聴する姿勢や態度、聴き方の技術を指します。育児中の人は得てしてこのスキルが高いことが多いのです。

 子どもとのコミュニケーションは一筋縄にはいきません。「なんで言う通りにしてくれないの?」と思っても、無理やりこちらの言い分を子どもに押し付けることはできません。そこで親達は根気強く子どもの話を聞き、本音を引き出すことを日々繰り返しています。このように育児中社員はコントロールの利かない子どもとの日常生活を通して、知らず知らずのうちに、仕事にも生かすことができる数々のスキルを身に付けているのです。

 もう少し例を挙げましょう。保育園のお迎えに行くために決まった時間に会社を出なくてはいけない。そのために仕事は「締め切りを設け」「優先順位を付け」「ToDoを効率良く片付けていく」。働く親達はこんなスキルも高めています。

 この気づきを裏付けるため、私は2010年にスウェーデンで働く育児中のマネジャー100人にインタビューし、仕事に活かせる「親のスキル」を見える化しました。すると、そのスキルは70を数えたのです(一部は下図の通り)。

 そのデータを基に、育児中社員を支援するための「Parent Friendly Company(PFC)」の考え方とは別に、育児中社員が育児と仕事を両立させることを通して培った様々なスキルを、積極的に業務に生かす企業の在り方を「ParentSmart Company」と名付けました。これは、従来のPFCの考え方を一歩先に進めたものです。

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