1960年代、スウェーデンの女性の労働力率は50%に過ぎなかった
ストックホルム商科大学・欧州日本研究所で研究員を務める佐藤吉宗さん
DUAL編集部 「スウェーデンは女性が活躍している国」というイメージが強いです。
佐藤さん(以下、敬称略) そのイメージは正しいと思います。2013年の労働力率(20~64歳)を見てみますと、日本では男性90.4%、女性69.0%のところ、スウェーデンでは男性88.8%、女性82.9%であり、女性の労働力率が男性に迫っています。
この背景には、結婚・出産・育児を機に退職する女性が少ないという要因があります。女性の年齢階級別労働力率に注目しても、日本で見られる「M字カーブ」が全く無く、出産・子育ての時期でも8~9割の女性が就業していることが分かります。
でも、これが元からそうだったかというと、そんなことはありません。1960年の女性の労働力率を見ると、スウェーデンでも50%に留まり、当時の日本と似たような水準でした。さらに、小さな子どもを持つ女性に限って見ると38%にすぎませんでした。これを底上げすべく、政府や労働組合、そして社会全体が様々な対策を打ちました。今のスウェーデンで、女性にとって働きやすい環境が構築されたのは、有効な対策を地道に講じてきたからなのです。
―― 50年も前から、女性の社会進出を後押しする政策に力を注いできたわけですが、その理由はそもそも何だったのでしょうか?
佐藤 スウェーデン人にとって「男女平等」は20世紀を通じて活発に議論されてきた社会テーマの一つでした。「性別が違うという理由だけでどうして女性が差別されないといけないのか」という疑問や、「男性も女性も同じように自分の能力を社会の中で発揮し、自分の望む人生を追求できるようにするべきだ」という考え方は多くの人が持っていました。
60~70年代に女性の大学進学率が上昇するにつれ、性別の垣根のない平等な社会を求める声は高まり、政府もそれに応えていったのです。確かに、労働力を増やし、経済成長を高めるという考えもあったでしょうが、それ以上に大きな原動力となったのは、公正や社会正義という観点から男女平等を推進していこう、という考え方でした。
次ページから読める内容
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- 育児休業の取得日数が夫婦間で平等になればなるほど、税金が控除される
- 社会の変革には“reform”だけでなく、“renorm”も大切
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