共働き世帯にとって保育園や学童の運営など、子育て支援を担う自治体は頼りになる存在であってほしいもの。このたび日経DUALでは、読者に代わって、自治体の首長への突撃インタビューを開始しました。最初は東京23区に取材を依頼し、区長に質問をぶつけます。

今回は、江東区。第二次大戦後の“焼け野原”、高度経済成長期には工場が建ち並ぶ公害のまちという歴史の中で、自分のまちを良くしたいという思いから政治家を志した山﨑区長。人口が増え続け、2020年の東京オリンピックも決定した右肩上がりのムードの中、子育て政策では保育園の大幅定員増や小学校の新設も急ピッチで進めています。上編では、画期的な試みである「サテライト保育」と、昔とは様変わりした江東区の姿について伺います。

山﨑 孝明 区長

1943年東京・江東区生まれ。大学卒業後、都立両国高校野球部監督、日本そば店経営(出前、調理)。都議会議員選挙に2度出馬し落選。木場の銘木店勤務、トラック運転手を経て衆議院議員秘書となり、1983年に江東区議会議員トップ当選、87年に同2期目トップ当選。1991年に東京都議会議員当選、以降5期連続当選。2007年に江東区長就任、2011年に再選、現在2期目。

全国初の「サテライト保育」を2014年4月から実施。2015年春には2園目も

山﨑孝明・江東区長
山﨑孝明・江東区長

DUAL編集部 江東区では待機児童数が前年より約100人減少、2014年度にマンション大手など民間企業の保育所12園の新設を補助金で後押しし、保育所定員を1088人増、といった報道もありました。1年間で2ケタを超す保育所の整備は過去最多とのことです。

山﨑区長(以下、敬称略) 地価は上がりましたが、江東区はほかのエリアに比べればまだ割安です。そこで認可保育園の整備を急ピッチで進めています。公立より私立のほうが財政的にはありがたいので、私立保育園を増やしています。

 現状、区立保育園が33園、区立幼稚園が20園。新設幼稚園には、200人の定員のところに600人の申し込みがありました。幼稚園の需要も高いので、幼稚園も増やさなければなりません。人口の増加は読めないところはありますが、保育施設については毎年約1000人ずつ定員を増やしていく予定です。

 土地が無く、地価が高いという理由で、他区が保育施設を作るのに苦戦していることはよく知っています。江東区も人口増にともなって定員を増やす必要があります。大規模マンション建築計画に当たっては保育施設を必ず併設する、また現在、保育士の不足が課題になっていますから、寮を完備して地方から人材を確保するなど、事業者は様々な試みを行っているようです。

―― 2014年4月からは、オフィスビルを利用した「サテライト保育」を始めましたね?

山﨑 はい、日本初の試みとして「湾岸サテライト保育所」として分園と本園の2カ所を新設しました。駅の近くに「分園」を作り、保護者はそこに送り迎えする。0~1歳児は終日分園で保育を受けます。2~5歳児はバスで江東区有明地区の「本園」に移して保育し、保護者のお迎え前にバスで分園に移動させるという仕組みです。ここで約270人の子ども達が保育を受けています。

 とてもうまく機能しているので、2015年4月には、2カ所目のサテライト保育所を設置します。分園は、イオン東雲店の1階に設けます。本園は都有地を区が購入してオープンさせます。やはり専用バスで本園と分園を行き来させます。こちらの定員は約270人です。