自分で子育てをすることで、子どもを取り巻く環境がより見えてくる

―― もともとの関心事が「子ども」だったのですか。

保坂 今でもそうですが、子どもが何をどう感じているのか、ということに強い興味があるのです。創刊間もない『日経トレンディ』で子どもがらみの市場トレンド記事を書いたこともありました。自分の手で子育てをすると、新たに見えてくる側面もあります。自らの子育て経験が、区長として子育て支援を考えるうえで今、非常に役に立っています。

 例えば、現代の子ども達はきっちり時間を管理されていますよね。「今日は何をしようかな」と考えることが子どもの特権のはずなのに、今の子は、小学生でもかなり忙しい。子ども同士が遊びの中で衝突する経験も大切なのに、それが無いためにボキャブラリーが非常に少ないまま成長してしまう。それが原因で、思春期になってから挫折したり、危うくなったりしてしまうという問題が生じてくる。

 それを少しでも補うために、世田谷区では「自分の責任で自由に遊ぶ」をコンセプトにした「プレーパーク」を設けています。これは1940年代以降のヨーロッパで、子ども達が好奇心の赴くまま、自由にやりたいことができる遊び場をつくろうという動きで広がった遊び場をモデルにしたものです。現在、5つの公園内にあります。

 やることが決まっているというのは、すべてを効率よく回しているようでありながら、実は失っているものも多いのではないかと感じるんです。子ども同士でのミニトラブルにしても、大人が介入することなく、子ども同士が言い合いをして解決するというのも大切ですよね。プレーパークはそんなことができる場です(参考:「都会でも思い切りたくましく遊べる『冒険遊び場』」)。

カウント方法を変えれば待機児童は600人台に減る。でもそれが問題ではない

―― 世田谷区は今年度の保育待機児童が1109人。ワースト1と言われていますが、カウント方法を変えれば約600人になるそうですね?

保坂 はい、「自宅で求職中」「育休延長中の人」を数えるか数えないかという問題です。

―― あえて大きい数字を公表している理由はどの辺りにあるのでしょう?

保坂 一言で言えば、数を小さく見せても問題の解決にはつながらないということです。世田谷区は「世田谷区保育サービス(区基準)待機児」というかなり厳しい定義を用いて待機児童を数えています。

 我々は「メートル法と尺貫法」と呼んでいるのですが、自治体によってカウント方法が違うと、比較のしようがない。いい悪いではなく、厚生労働省にも「カウント方法を統一したらどうですか」と提言しているんです。