誰にも言えない、言いたくない思いを書いていたのに……

 「ママ、書いた日記を全部捨てちゃったんだよね」

 ときどき子ども達に言われることがあります。

 私は、小学校の頃から書き続けていた日記を、あるとき一気に捨ててしまったのです。

 自発的だったのか、親に書かされたのかは覚えていないけれど、私は小学校に上がる前から日記をつけていました。日記を書くことが習慣になっていたので、夏休み明けにあわてて、まとめて日記を書くなんてことは一度もありませんでしたね。

  「今日は、お父さんがお土産にどこどこのお寿司を買ってきました」みたいに、最初は日常の出来事を書いているだけだったのが、そのうちに、誰にも言えない、言いたくない自分の思いを書くようになって。だから、中学3年の時、両親に「誕生日プレゼントは何がいい?」と聞かれた時、「鍵がついた日記帳!」とリクエストしました。

 買ってもらったのは、ヨーロッパの昔の本みたいな、真っ白で、鍵付きのとてもきれいな日記帳。とっても嬉しかった! 何よりも、鍵が付いているから誰にも読まれない。思う存分、自分の心に秘めた思いを書ける。親には内緒にしたいことももちろん書いていました(笑)。もう時効だから言っちゃうと、中学卒業間近の頃、友達と初めてコークハイを飲んだ日のことも。

 すると、ある日の夕食で、父から「お父さん、今日は珍しくコークハイでも飲んでみようかな。な、香」って言われたんです。その瞬間、「日記、読まれた」と分かりました。

 信じられない! なんてことする親なんだ!! 怒りがわなわなとこみ上げました。イケナイことをしたのは私だから逆ギレなんですが、日記を勝手に読んだ父親に対して、ありえないほどの怒りがこみ上げて。その怒りの勢いのまま、私、日記を全部捨ててしまったんです。イケナイことをした証拠隠滅と(笑)、後悔と、日記を読まれた恥ずかしさを全部捨て去るように。幼い頃から書いていた日記も全部まとめて。もうちょっと冷静に考えて、父に読まれた鍵付きの日記だけにすればよかったんだけど。