“男社会”で女性が活躍できる企業を目指す

 単なる「多様性」を超えた昭和電工のダイバーシティー戦略だが、これよりも前の2008年に実施した第一フェーズでは、「女性活躍推進プロジェクト」を推し進めた。

 定年退職者や障害者の活躍という面では先行していた昭和電工だが、当時、全社員に占める女性従業員の割合は6.6%。まさに典型的な“男社会”の会社で、「女性社員の活躍」は世間の動きに遅れを取るウィークポイントとなっていた。

 こうした状況を打開しようとしたのが、「社員の多様性(ダイバーシティ)を尊重した経営」戦略のもと発進した女性活躍推進プロジェクトだったのだ。

 「6.6%しかいなかった女性従業員の割合を2012年までに10%まで増やし、性別にかかわらず活躍できる企業を目指すところから始まりました」(伊藤さん)

 もともと理工系専攻の女子学生は数が少ないうえに、理系のなかでも手堅い化学素材を扱う同社では、女性の技術系採用は数が限られてきた。それが最近では、日本の大学で理系の女子学生比率が増加傾向にあることと相まって、「卒業生や働く先輩の活躍を見て、当社に興味を持ってくれる流れができつつあります」。また、海外事業を含め幅広いフィールドで活躍できることや、女性にとってもやりがいを感じられる土壌があることを訴求していった結果、文系学生の間でも知名度が向上しつつあり、営業、経理、広報、法務、人事など様々な部署において積極採用・配置を実行してきた。

 もちろん、女性従業員の数だけ増やしたのではなく、女性が働きやすい職場環境も整えた。育児休業取得者と上司のための「復職支援プログラム」を制度化し、妊娠、出産、育休を経て復職してからも、しばらくの間、上司と定期的に面談を行うというものだ。育休中には自宅のPCや携帯から育児情報の収集やe-ラーニングの受講、上司とのメール交換などが行えるシステムも構築。社内に両立支援の相談窓口も設置した。

 こうしたこともあって、2008年以降に採用された女性は、育休取得後、ほぼ100%の復帰を果たしているという。

 従業員数の9割を占める男性社員に対しても、ダイバーシティーの意識を浸透させる取り組みを考えた。展開したのは、男性社員に向けた「パパキャン(パパ育休取得キャンペーン)」だ。男性社員も育児・介護休業法に基づく休暇を取得できるのはもちろんのこと、同社独自の制度として有給で7日を取得できるということについて、改めて周知徹底を図った。取得者は2008年の開始から現在まで延べ230名以上にも上るという