女性だけが直面する「子どもを産むと昇進できない」という現実
著者・中野円佳さんも含めた12人のワーキングマザーと労働経済学者の男性が参加した読書会。育休取得によるブランクや、時間的な制約を持ちながら働く時期があることが昇進の妨げになる点についても、様々な意見が交わされた。
1980年代に大手マスコミに入社した50代の女性は、入社してすぐに男女雇用機会均等法が制定され、何をするにも「女性初の」という言葉で紹介されることが多かった。30代半ばまでは報道の第一線で働き、別の部署の事務職へ異動した後、出産。報道の仕事をしているときは「女性初ということでチヤホヤされるけれど、本当の意味で仲間には入れてもらえていない」と感じることが多く、異動してからは「もう1人産んだら、管理職にはなれない」との思いがあったという。
第2子出産をためらう声は、20代で出産し、今まさに「もう1人産むかどうか」の問題に直面している「育休世代」の女性達からも多く聞かれた。
「第2子は欲しいですが、もう一度休むと昇進のタイミングを逃してしまうかも」「育休から復帰してしばらく経ち、そろそろ第一線の仕事に戻ってはどうかと打診されましたが、第2子を産むかもしれないと思うと、その仕事をやりたいだけで手を挙げることはできません」
こうした悩みに、「育休世代」の女性の多くが共感を示した。
これらの発言から浮き彫りになるのは、均等法制定から30年を迎える今なお、「子どもを産むと昇進できない」ことに悩む女性の姿だ。
1990年代に就職し、管理職への昇進が決まってから第1子、課長になってから第2子を出産したという公務員の40代女性は、「昇進は試験と面接で決まります。私のように先に昇進試験をパスしてから出産する女性もいれば、先に出産して子どもがある程度大きくなってから、昇進試験を受ける女性もいます」と話す。
民間企業に勤務し、育休復帰後に勤務時間が短くなると業績が正当に評価されず、ハンディを感じている女性達からは、「試験という明確な基準をクリアすれば、子育て中でも正当に評価される」点を羨ましがる声も上がった。
この公務員の女性は、「本の中では、祖父母任せの子育てに抵抗を感じる人が多いと述べられていましたが、私は親の近くに住み、海外赴任中も親の手助けを得ることで乗り切ることができました。職場で周りのワーキングマザーを見ていると、真面目で何でも一人で抱え込み過ぎる人が多いという印象を受けます」とのコメントも述べた。