制約経験のあるボスは、部下のパフォーマンスを引き出しやすい

 入社当時、越智さんの職場は「9 to 9(ナイントゥーナイン)」といって、朝9時から夜9時まで働くのが前提の雰囲気があったという。ところが最近では、社内でも様々な働き方が認められるようになってきている。例えば、育休や時短勤務を選ぶ人は女性社員だけでなく、男性社員でも、さらにはマネジメント層でも確実に増えてきた。

 「部長職の女性社員が時短を取ったケースもあります。管理職が率先して早く帰ることで、部下も取り組みやすくなるのだと感じています」

 マネジャーの立場にある越智さんはこう続ける。

 「今後、育児や介護を経験した人が管理職にもどんどん増えてくれば、会社の成長につながると思います。そういった人達は私生活で自分とは違う価値観や考え方の人をまとめたり、どうにもならない壁を体験したりしているので、様々なバックグラウンドを持つチームメンバーのことを理解しやすい。各人がパフォーマンスを発揮しやすい環境をつくってあげられると思います。

 今後、職場は性差や国籍だけでなく、異なる働き方の集合体にもなっていきます。『残業は何時間でもできます』『土日もOK』という人もいれば、『17時以降は一切仕事を入れません』という人もいる。そういう人達を束ね、結果を出していかなくてはいけません。

 私も経験から学んだことを後輩達に伝え、不平不満が出ないようにするにはどうしたらいいのか、それぞれの能力を引き出すにはどうしたらいいのかを考えながら、それぞれにとっての働きやすい環境を整えていけたらと思っています」

(文/西山美紀 撮影/吉澤咲子)