住宅購入に悩む共働き世代を、ファイナンシャルプランナーの中嶋よしふみさんがリポートする本連載。

 前回記事「家を早く買わないと家賃がもったいない、は間違い?」では、「家を早く買わないと家賃がもったいない」と話す夫婦に対して、中嶋さんは「その考えは間違っている」と理由を説明した。

 今回はその続編。「住宅を買うのはオリンピック後が狙い目なのか」「フラット35より金利が安い住宅ローン」「貯金を取り崩さずに済んでいたのは、社宅だったから」などのテーマを取り上げる。

 最初に前回記事のおさらいをしよう。ご来店頂いた橋本さん夫婦(仮名)は家族5人で浦安に住んでいる。奥さまは3人目のお子さまの出産を機に退職。今年1月から派遣社員として復帰したという。以下はご夫婦のデータだ。

■年収:夫婦合わせて840万円程度
夫(34歳) 650万円 化学系企業の営業マン
妻(35歳) 190万円 派遣社員として大手企業の事務職として働く。収入は今年の見込み。来年はもっと収入が増える予定

■家庭の状況
結婚8年目。7歳と4歳と1歳の男の子3人

■住居
結婚時から千葉県新浦安にある社宅住まい。家賃は2万円。浦安近辺で購入を検討中

■資産
現在の貯金額 1500万円
年間の貯金額50万円〜200万円くらい(奥さまが産休、育休、退職、再就職を繰り返していたため、安定せず)

■レッスン・相談の内容
マイホームを買いたいが、社宅の家賃が安いのでタイミングについて迷っている。どうしたらよいのか

 それでは、相談の続きをお読みいただきたい。

市場の価格変動が絡むことで「絶対」はない

 僕も全く買う気が無いわけじゃないですけど、オリンピック後は狙い目だったりするんですか? よくオリンピックまでは不動産価格が上がる、その後は下がる、なんて聞きますけど。

シェアーズカフェ中嶋(中) そういった相場観は基本的にはアテになりません。気にしないでいいと思います。もしその予想が100%当たるなら、今土地を買ってオリンピックの前に売れば必ず儲かるということになりますよね。でもそんなことはありえません。

 例えば去年の異常な株価上昇とか最近の円安は、ちゃんと予想できた人はほとんどいないんですね。市場の価格変動が絡むことで「絶対」はないと考えてください。あとは「趣味」の問題です。お子さまをマイホームで育てたい、家を買ってそこに根を下ろしてコミュニティーに参加したい、というのは損得とは関係のない話ですから。

 株価はアベノミクスで2万円を超える、不動産価格はオリンピックまで上がり続ける、為替はもっと円安が進む、金利は将来必ず上がる……。相場には様々な予想がつきものだ。しかし、こういった予想にほとんど意味はない。1年先のことが分からないのだから、5年以上先のことはもっと分からない。相場の予想よりも、相場がどう動いても安定した生活を送ることができるようにしておくほうが重要だろう。

 自分は普段から、「家を買う時は損得とか相場の予想より、リスクとライフプランを重視して購入を考えてください」とお話ししています。結果としてオリンピック後に下がるかもしれませんし、その逆で今買うことがお得かもしれません。でもそれは後になってみて初めて分かるのですね。

 ですから例えば今買うのであれば、希望の家を買うことで他の出費の支払いができなくなるリスクは無いのか、先ほど伺った転勤の可能性も含めて今買うことがアリなのか、要するに楽しい生活を安心して送ることができるのか、そちらのほうがよっぽど重要ということになります。先ほどの子育てとかコミュニティーはまさにライフプランの話です。

 何となくそうなのかなとは思っていたんですね。でもそういう相場の予想を色々聞くと安い買い物じゃないので気になってましたけど、仕事と同じで考えても無駄なことは考えるべきじゃないですね。転勤した後に妻の仕事をどうするかとか、子どもの転校をどうするかとか、やっぱりそういう方が問題ですよね……。

 そうだけど、そうなんだけど、それって社宅でも持ち家でも同じ話だから。やっぱり今買った時にどうなるか知ったうえで判断したいです。

 ではちょっとシミュレーションしてみましょう。