12月5日、東京・世田谷区、馬事公苑近くに「ママをたすけるシェアオフィス」と銘打った「Maffice」がオープンしました。特長は、子どもを保育スタッフに預け、親は保育スペースとは分離されたオフィススペースで仕事に打ち込めること。「子連れで行けるシェアオフィス」や「コワーキングスペース」は都内各所に登場していますが、こういった環境はまだ珍しいようです。Mafficeを運営するオクシイ社長、高田麻衣子さんに聞きました。

子どもを預けて仕事に集中できるシェアオフィスは、まだまだ少ない

Mafficeを運営するオクシイ社長、高田麻衣子さん
Mafficeを運営するオクシイ社長、高田麻衣子さん

 「現在、“子連れOKのシェアオフィス”は増えていますが、託児サービスを提供する施設は少なく、保育支援としては保育スタッフによる見守りサービスがある所が主流です。それでは『家にシッターさんを呼んで、子どもと同じ部屋で仕事をするという状況とあまり変わらない』環境に留まり、子どもが甘えてママのところに来たら、ママは仕事を中断しなくてはいけません。そのため、子どもを一定時間隔離し、仕事に集中できる環境が求められていると感じていました」と高田麻衣子さんは語る。開業後1週間足らずで10件の会員契約があったそうだ。

 高田さん自身、息子(小1)と娘(保育園・4歳)の母親だ。「とにかく働くママのストレスを少しでも軽減したかった」と、起業・開業の決意を振り返る。

 1人目の子どもを妊娠したのは今から7年前。当時、都心から電車で往復3時間かかる場所に住んでいたため、妊娠中は大きなお腹を抱えて満員のJR中央線に揺られながらの通勤を経験した。

 復帰する直前に往復1時間圏内の立地にマンションを購入し、通勤は楽にはなったが、2年後に2人目を産んで復帰したときに東日本大震災が起きる。その後も、ゲリラ豪雨や台風が起きる度に両立生活への影響を受け、痛い思いをした。

 「急に悪天候に見舞われることが増えています。また、電車で他線からの乗り入れが増えて便利になりましたが、車両故障や悪天候が起きると通勤電車のダイヤが乱れやすくなったという一面もあります。電車が遅れたり止まったりすると、ただでさえ秒単位で動いている働くママの一日のスケジュールはガタガタに崩れてしまうのです」

 そのような環境の変化を背景に、高田さんは「都心から遠いところに住んでいるママが、家に近い場所で無理なく働き続けるという新しいワークスタイルを実現したい」と考えるようになった。10年以上、不動産業界に勤める中で培った地理的なセンスや不動産ビジネスモデル構築のスキルを生かして戦略を練った。

 思いはそこにとどまらない。

2階にある仕事スペース。窓からは、馬場を駆ける馬が見える

同じく2階の仕事スペース。背後にキャビネットがある席は固定デスク

1階のオープンラウンジ