統計データを使って、子育てや教育にまつわる「DUALな疑問」に答える本連載。今回は「児童虐待」について取り上げます。
 ここ20年、児童虐待の相談件数は約70倍に激増していますが、これは問題意識が高まった表れだとも言えます。一方、全体の3分の1が「心理的虐待」を占めるなど、内容が変化しているのも確か。また「過重な勉強や受験も、本来の意味での『児童虐待』に当てはまるのではないか」と筆者は主張します。

 こんにちは。武蔵野大学講師の舞田敏彦です。今回は児童虐待のお話ですが、この言葉の英訳をご存じでしょうか。授業で学生さんに尋ねると、かなりの確率で「チャイルド・バイオレンス」という答えが返ってきます。子どもを殴る・蹴るというイメージからでしょうが、これは正しくありません。

 子どもの虐待は有形の暴力だけに限られるのではなく、他にもさまざまなバリエーションがあります。それを示す前に、児童虐待の基礎統計をご覧いただきながら、話を展開していくことにしましょう。

児童虐待の相談件数は1年で6万7000件に

 まずは、児童虐待の相談件数です。新聞などでもよく見かけるデータですが、以下の図1は、全国の児童相談所が受け付けて、実際に対応した事案の件数のことです。図1からわかるように、この20年間にかけて激増しています。1990年度では1000件ほどでしたが、2012年度では6万7000件にもなっています。近年の少子化傾向にもかかわらず、70倍近くの増加です。