こんにちは。武蔵野大学講師の舞田敏彦です。今回は児童虐待のお話ですが、この言葉の英訳をご存じでしょうか。授業で学生さんに尋ねると、かなりの確率で「チャイルド・バイオレンス」という答えが返ってきます。子どもを殴る・蹴るというイメージからでしょうが、これは正しくありません。
子どもの虐待は有形の暴力だけに限られるのではなく、他にもさまざまなバリエーションがあります。それを示す前に、児童虐待の基礎統計をご覧いただきながら、話を展開していくことにしましょう。
児童虐待の相談件数は1年で6万7000件に
まずは、児童虐待の相談件数です。新聞などでもよく見かけるデータですが、以下の図1は、全国の児童相談所が受け付けて、実際に対応した事案の件数のことです。図1からわかるように、この20年間にかけて激増しています。1990年度では1000件ほどでしたが、2012年度では6万7000件にもなっています。近年の少子化傾向にもかかわらず、70倍近くの増加です。