男性並みにバリバリ働いていた女性が出産後に仕事を諦めざるを得なくなるのはなぜか? この問題を分析したのが、中野円佳さんの著書『「育休世代」のジレンマ』です。
 この本では、出産後に会社を辞めなかった場合でも、第一線から外れた「マミートラック」(母親向け就労パターン)に乗って「ぶら下がり」と呼ばれる立場になってしまうなど、育休などの制度があるからといって、必ずしも出産後の女性にとって働きやすい環境が整っているわけではないことが明らかにされています。
 上編(「バリキャリ女性が出産後に仕事を諦めるのはなぜ?」)に続き、中編では「職場」や「夫」をめぐる問題を中心に、著者の中野円佳さんのインタビューをお届けします。

子育て中も“やりがいのある仕事”に挑戦するチャンスを

DUAL編集部(以下、DUAL) 『「育休世代」のジレンマ』の中では、育休復帰後の仕事の「質」を変えずに「量」で調整できる職場では、仕事を継続しやすいという分析がなされています。ただ、日本企業の場合、会社にいかに長時間コミットしたかで評価されることが多く、時間的な制約のあるワーキングマザーが正当な評価を得にくい点も指摘されていました。

中野さん(以下、中野) 企業が社員に与える報酬は、月収、ボーナス、成長につながる「次の仕事」、という3つの要素があると思います。本来なら、育休復帰後の仕事量に応じて月収とボーナスが減ることはあっても、本人の能力や時間当たりの生産性が劣っていないのであれば、成長につながる「次の仕事」は他の社員と同様に与えられてよいはずです。

 でも今は、仕事量を減らすと、月収もボーナスも「次の仕事」もすべてマイナスという評価をされているワーキングマザーが少なくありません。これでは、成長につながる仕事に挑戦するチャンスが奪われてしまうので、やりがいが感じられなくなってしまいます

DUAL  自分の成長や昇進につながる仕事ができなくなることで、「今の仕事は子どもを預けてまでする仕事なのだろうか」という迷いが生じて退職に至るケースもあることが、本で述べられていました。ワーキングマザーがやりがいのある仕事をできるようにするには、会社はどんな支援をすればよいのでしょうか?

中野 ダイバーシティーが進んでいる海外企業などでは、「この出張はあなたに行ってほしいから、ベビーシッター代は会社が負担します」と言って、育休復帰後の女性に海外出張を任せるケースもあります。この場合、出張に行けるかどうかを本人任せにするのではなく、本人が「行けます」と言えるように環境を整えるべく会社がサポートしていると言えます。

 日本企業では、誰に対しても同額のベビーシッター代の補助を出すというように、支援制度を一律で導入し、「だから毎日深夜まで働けるよね」などと言いがちです。でも、「この人にはこの仕事を任せたいから、この日だけは時間を確保してほしい。そのために必要なこの支援をする」というように、個人や仕事のタイミングに合わせた柔軟な対応ができる支援制度をつくるほうが、両立支援策としては効果的だと思います。ここで「前例がない」とか「不公平だ」などと言っていると、優秀な人材が力を発揮できず、どんどん流出していきます。