0歳から10歳まで、情報伝達力は飛躍的に伸びる
DUAL編集部(以下、DUAL) 絵本の読み聞かせは子どもの学力を伸ばす、賢い子をつくるなんて言われていますが、脳科学的には正しいことなんでしょうか。
泰羅教授(以下、泰羅) 読み聞かせをすると、言語機能をつかさどる脳の「言語野」が刺激されます。そのため、言葉を早く覚える、語彙が豊富になると言われています。まあ、当たり前の話なんですが、大切なのは脳の機能を幼いうちからたくさん働かせるということです。赤ちゃんの脳は生まれたとき、大きさは小さいけれどすでに大人の脳と変わらない形態をしています。
DUAL ええ!そうなんですか。 赤ちゃんの脳ってシワもなくて、未発達なものだと思っていました。
泰羅 赤ちゃんの脳の格好は生まれてくるころにはすでにできあがっています。シワもあるし、神経細胞の数も大人と同じようにそろっている。でもまだうまく働くようにはなっていない。
脳には「使わないとうまく動くようにならない」という基本原理があります。例えば、漢字は眺めて覚えるものではなくて書いて覚えるものだし、自転車は何度も乗ることで乗り方を覚えるというように、脳の神経回路を一生懸命働かせることが絶対的に重要です。
0歳児では脳の働きは未発達。神経も裸電線で、情報を伝えるスピードは遅いし、遠くまで伝わらない。それが大人になる過程で絶縁体もできて太いケーブルに変わり、情報伝達が飛躍的に早くなる。こうした変化がダイナミックに起こるのは0歳から10歳くらいまでです。
DUAL つまり、絵本の読み聞かせは0歳から小学校中学年くらいまでにしっかりやると、言語能力の発達に効果的というわけですね。
泰羅 そうですね。でも、それだけではないんです。
以前、読み聞かせの効能について脳科学的なアプローチの実験をしたことがありました。思考や記憶、創造力をつかさどる脳の「前頭前野」が活性化するのではないかという仮説を立て、子どもの頭に装置をつけて脳の働きを調べたところ、残念ながら前頭前野において反応は見られませんでした。