産む前の時点で会社に見切りをつける女性も増えている

DUAL 現時点では子どもがいない女性達も、出産後のキャリアと育児の両立の問題には関心が高いのですね。

中野  現在は、妊娠・出産をする前の時点で「この会社では出産後のキャリア展望が描けない」と感じると、会社を見切って転職する女性も増えてきています。この場合、妊娠・出産とは関係ない社員が辞めていくため、会社側は退職の原因が「出産後にキャリアを継続できない」というワークライフバランスの問題にあるとは思い至りません。

 しかし、人材の流動化が進む現在では、会社側が「辞める人は辞めるから仕方ない」と割り切っていると、優秀な人材は次々と外部に流出してしまいます。女性を有効活用し、長く働き続けてもらうためには、 子どもをいつ産むかにかかわらず、本人の能力や実績に応じてキャリアの展望を描ける仕組みをつくることが急務となっているのです。

DUAL アラフォー世代からは、どのような声が寄せられたのでしょうか?

中野 仕事と子育てを両立してきた人、子どもを産まない選択をした人、それぞれの立場から反響がありました。

 仕事と子育てを両立してきた人からは、「よくぞ言ってくれた!」というコメントを数多くいただきました。アラフォー世代の女性達も、ワーキングマザーとして働き続けるなかで葛藤を抱えてはいたものの、「大学を出てやりがいのある仕事に就き、子どもを持つこともできた自分は恵まれているのだから、苦しいなどと言ってはいけない」と考え、声を上げられずにいたのかもしれません。

 この世代では、育休などの制度が十分に整っていなかったこともあり、「自分が望むようなキャリアと子育ての両立はできない」と感じて、黙ったまま会社を去った人も少なくないはずです。

 また、子どもを産まない選択をした人からも、企業社会における女性の生きづらさという点で共感の声が寄せられました。子どもの有無にかかわらず、女性であるというだけでキャリアの継続が難しくなる。そう感じている女性達も今のアラフォー世代には多かったのではないでしょうか。

DUAL 「育休世代」が抱えているジレンマは、他の世代の女性達にも共通する部分があるのですね。

中野 ダイバーシティーの重要性が認識されるようになってきたとはいえ、多くの企業ではいまだに子育てをしている女性を他の社員とフラットには扱いきれていないのが現状です。

 でも、女性が出産後もキャリアを継続できる社会を実現するには、政府や企業の経営者に、こういった立場の女性達がジレンマに苦しんでいる現状の問題点に目を向けてもらう必要があるのではないでしょうか。 これまで押し黙っていた女性達は会社側ときちんと交渉し、会社側も対話の姿勢を持つことが望まれます