民間人校長として大阪市の小学校に勤める山口照美さんは、以前は塾講師として活躍されていました。山口さんによると、学校の定期テストは、勉強のためだけでなく、社会人になったときに役立つ貴重な経験も得られるそうです。小学生のころから親が理解しておきたい、そして子どもにしっかり伝えておきたいテストの重要性を伝えます。

 校長先生はそれぞれ、得意技を持っている。ある校長先生は水泳指導のプロで、夏は毎日プールに入る。音楽の指導が得意な校長は、全校合奏やリコーダーの指導に入ると聞いた。民間人校長は、経歴によってバラエティに富んでいる。

 私の得意技は、塾講師の経験による「テスト対策指導」だ。中学に行って最初に学習面でぶつかる壁、定期テスト。塾と公立小学校の現場、そして社会人経験を踏まえて、強く思う。定期テストは、将来の仕事力を鍛えるのに有効だ。だから、中高生は逃げずに向かい合ってほしい、と。

時間の使い方のPDCAサイクルを回す

 中学に入ると、誰でも新鮮な気持ちになる。環境が変わり、教科担任制に変わる。今までがどうであれ、ほとんどの子が「がんばろう」と思う。1学期の中間テストは、英語と数学が簡単なこともありそれなりの点を取る。しかし、期末テストから取り組む姿勢に差が出てくる。部活が忙しい。環境に慣れて、友達ができた。遊ぶのが楽しい。真面目にやるのはカッコ悪いと、周りの目を気にして虚勢を張り出す。小学校での積み重ねが不足しており、授業についていけない子も出てくる。中学生になるのを機に、スマホを与えられてLINEやソーシャルゲームで寝不足という子も増える。睡眠時間が足りなければ、授業内容は頭に入らない。

休み時間に、3~6年生対象の「かけ算道場」が校長室で行われている。九九を定着させたいと、担任外の教員が続けてくれている。マス計算やフラッシュカードに取り組み、習得したら「卒業」する
休み時間に、3~6年生対象の「かけ算道場」が校長室で行われている。九九を定着させたいと、担任外の教員が続けてくれている。マス計算やフラッシュカードに取り組み、習得したら「卒業」する

 保護者があまりうるさくないと、「一番がんばったのは1年1学期の中間テスト」で終わってしまう。点が取れない自分、テスト前にがんばりきれない自分に慣れていく。テストの朝、教室に「今日の英語死んだ!」「数学マジ終わってるし」と入ってくる。教師のせいにする子もいる。私が進路講演で話す相手は、高校生が多い。いつも力をこめて言う。

 「同じ授業を受け、同じ試験範囲を同じ日に知らされる。試験の日までに、何をするべきか考えて勉強する。社会に出れば、仕事も似た面がある。締め切りがあり、やるべきことの優先順位をつけ、サボりたい気持ちと戦って間に合わせる。定期テストを乗り切れなければ、仕事はできない