一つの家庭にこれだけ、使用人がいるのだ。家庭によっては、分業型ではなく、一人の使用人が家政婦のように何でもこなす場合もある。ただ、人の仕事を奪ってはいけないという意識があるので、分業型が浸透しているのが現状だ。

家族の外出にも同行する子守のアヤ

 さて、気になるインドの子育て事情。使用人のなかでも気になる子守役「アヤ」とは一体どんな役割なのだろう? 

アヤを教育中のベテランアヤが”模範散歩”をしている
アヤを教育中のベテランアヤが”模範散歩”をしている

 この国では、女性は嫁いだら、都市部でも夫の兄弟と両親の家に住むのが一般的。兄弟が結婚して家族を持つと、それだけ大家族になるのは当然だ。大家族では必ず誰かの手があるので、生後間もない赤ちゃんのベビーシッターをわざわざ雇う必要は無い。

 だが、なかには両親が田舎に暮らしていて、仕事のために都会に出てきている共働き夫婦もいる。そうした共働き世帯は「アヤ」という子守に頼む。また、高齢の両親と暮らし、赤ちゃんの面倒をお願いできない場合もアヤの出番だ。

 アヤには特別な資格は無く、子ども好きで世話ができればよい。年齢は15歳くらいからベテランの50代まで様々。大切な子どもを預かるので、アヤのお給料の相場は月8000~9000円と他の使用人よりも高めに設定されている。

 ちなみに、一般的な公務員や会社員の月給は約2万6000円から6 万3000円くらい。ただし、インドでは金利が約9%と高く、貯金をしている人が多かったり、花嫁の持参金があったりと、お給料だけだと各家庭にどのくらいお金があるかは判断がつかない。また、兄弟や両親と一緒に住む大家族のため、アヤをはじめとする使用人へのお給料はみんなで出し合うのが一般的だ。

 子守であるアヤは、ショッピングなどの外出にも家族と一緒に行く。レストランでは親ではなく、アヤが子どもに食べさせたりして面倒を見る。親は彼らの仕事を奪ってはならないので、手助けは一切しない。長期のバカンスとなると、アヤが付き添って一緒に泊まりながら、子どもの面倒を見ることもある。

 大切な赤ちゃんのいる家庭に他人が入ってきて、その他人に子どもの世話を託すということは、雇用審査もそれなりに厳しい。1~3カ月の試験期間があるほか、健康診断書提出の義務もある。これはアヤに限ったことではなく、メイドやサーバントにも言えることだ。

生後まもない赤ちゃんと母親は一日のほとんどを一緒に寝室で過ごす
生後まもない赤ちゃんと母親は一日のほとんどを一緒に寝室で過ごす

 ではどういう検査が必要なのかというと、X線、一般血液検査、肝機能検査、検便、尿検査のほか、AIDS、B型肝炎、ツベルクリン反応などで、検査料は雇用者が負担する。ちなみに、検査結果は雇用者がログインしたサイトで見ることができるので、郵送されるのを待つ手間がいらない。さすがIT国で、X線写真までアップされている。

 採用が無事決まり、使用人用の部屋がある場合はアヤも住み込みとなる。あくまでも子どもの世話だから、掃除、食事の支度、買い物などはしない。以下がアヤの主な仕事だ。

●子どもと散歩 (大体近所の公園)
●おむつ替え
●ミルクを与える
●離乳食を与える(メイドが作ったものだが、場合によってはアヤが作ることも)
●家族が外出する際、同行し、子どもの面倒を見る