人口減少と同時に人口の世代間格差が拡大することも無視できません。日本の人口に占める高齢者(65歳以上)の割合は、このままいけば2055年にほぼ40%に達します。となれば日本経済を支える生産年齢人口と従属人口(高齢者と子ども)の比率は、ほぼ半々。現役世代1人で高齢者1人を支える形ですから、現役世代の負担は今の倍ほどにも膨らむことになります。

 これを和らげるには労働人口を増やす必要があり、そのためには高齢者と女性も重要な労働人口となっていきます。外国からの移民の受け入れも検討すべきでしょう。

 負けず劣らず深刻なのは、人口の地域格差。これは人口減少と同時に、特定エリアへの人口集中が進んでいるためです。国土審議会の推計(2011年)によると、2050年までに人口が増えるとされる数少ない地域は、東京圏(東京、神奈川、千葉、埼玉)と名古屋圏(岐阜、愛知、三重)ばかり。それ以外の地域の人口は減り続け、今は人が住んでいる地域の5分の1が「無人地帯」になるのだとか…。

文明も文化も人口減少期に進化した。子ども達よ、大志を抱け!

「しかし、ピンチはチャンスだ。自由な発想で未来を切り拓ける君達は幸せ者なんだよ」

「よーし、僕がんばる。世界の役に立つ!」

 すでに触れた通り、人口の減少は文明のシステムが限界に直面していることの証し。ピンチには違いありませんが、裏を返せばこれほどのチャンスはないともいえます。

 「日本の歴史を振り返っても、それまでに蓄積した知的資産をそしゃくし、次代に向けた進化の芽を育てたのは、決まって人口停滞期。日本の文化が成熟したのも、平安期や江戸期後半のように人口増加が滞った時期でした」(鬼頭さん)

 もしかすると、あらゆる分野の新しい常識がこれから書き換えられていくのかも。資源がひっ迫するという懸念にしても、今の常識に縛られていればこそかもしれません。日本国内には、電力需要を含むすべてのエネルギー消費量をカバーできる再生可能エネルギーが存在するという、日本学術会議の報告(2014年)もあります。ピンチをチャンスに変える余地は、工夫しだいでいくらでもあるということです。

 だからこそ声を大にして子ども達に言いたいのは、「大志を抱け」の一言です。既成の枠組みが制度疲労を起こした結果として生じた今の閉塞を破るのは「君達なんだよ」と伝えてみてはいかがでしょう。

 子ども達へのメッセージとして鬼頭さんが強調するのは、意識を海外に開くことの大切さです。

 「人口停滞期は自国にこもる傾向が強まるものですが、だからこそ意識的に海外に目を向けてほしいと思います。経済的な豊かさを維持するならなおさら、これからは海外諸国との相補関係が不可欠。積極的に海外に出ると同時に、海外からの人や文化を柔軟に受け入れる姿勢が求められます。新しい発想や知恵は、異質なもの同士がぶつかり合う中でこそ生まれるのです」

(文/手代木建)