子どもが生まれてから、上質なレストランに行く機会が減ったという共働き夫婦は多いのではないでしょうか。子連れで気軽に行けるのはカジュアルなダイニングやカフェに限られ、周りを気にしながらそそくさと食事を済ませるか、個室でこっそり、が精いっぱい。外食のために子どもを両親やベビーシッターに預けるのにも限界があります。
 実は筆者もただ今、0歳児と3歳児の子育て中。自由な美食生活を謳歌していた出産前が懐かしい……(涙)と寂しい思いをしていたら、なんと最近、子連れ客限定の「キッズデー」を実施するレストランが東京で増えているではありませんか。「特に働くママへのご褒美に使っていただきたい」「家族みんながリラックスして外食を楽しめるように」など、キッズデーを始める店の理由は様々ですが、平日ではなく、週末や祝日に開催日を設けているところが多いのはうれしい点。話題のシェフの店やミシュランの星付きといった一流店のほか、キャンセル待ちが出るほどの人気店も。
 この連載では、そうした店を順に紹介し、その内容やブームの理由をリポートします。

キッズデーの主役はあくまで大人。料理やサービスは通常どおり

 銀座という街の魅力は別格だ。大人の街、本物の一流が集まる街。そんなイメージもあって、実際、子連れではおいそれと足を踏み入れることのできないレストランも多いが、「お子さまウェルカムデー」を昨年スタートして注目を集めている名店を発見! それが「ファロ資生堂」である。

 同店は、1902年に創業し、銀座の顔として長く愛されてきた「資生堂パーラー」が手掛けるイタリアンだ。「ファロ」とはイタリア語で「灯台」の意味。2001年に東京銀座資生堂ビル10階に灯台の名のごとく登場してから、ミシュランガイドで星を6年連続で獲得するなど、料理だけでなく、空間やサービスにおいても高いレベルを誇っている。

 そんな美食家向けの店が、なぜキッズデーを?

「『子どもができてから、ゆっくりディナーに出かけられなくなったのが寂しい』『家族そろって食事がしたい』。きっかけは、そうした常連のお客様からの声でした。そこで、もともと定休日だった日曜日を、お子様とご一緒のお客様限定の日として開放させていただいたのです」とマネジャーの藤井康弘さん。

 「お子さまウェルカムデー」は年3~4回、月曜日が祝日に当たる連休の日曜日の夜に開催。ランチではなく、あえてディナーに実施しているのは珍しい。つまり、同店のキッズデーはあくまで「大人が主役」。大人が気兼ねなく、ゆったりと食事を楽しめる時間をつくりたいという思いから始まっているため、メニューは通常とまったく同じものを用意している。

 夜なら心おきなくワインも飲めるとあって、ワイン好きのゲストも多く訪れるそうだ。

天井が高く、テーブルの間隔を広くとった開放的なインテリア。肘付きのゆったりとした椅子でクッションを重ねてくれるので、小さな子どもでも座ることができる。ソファのボックス席は予約可能
天井が高く、テーブルの間隔を広くとった開放的なインテリア。肘付きのゆったりとした椅子でクッションを重ねてくれるので、小さな子どもでも座ることができる。ソファのボックス席は予約可能